円柱野郎

東京喰種 トーキョーグール【S】の円柱野郎のネタバレレビュー・内容・結末

3.0

このレビューはネタバレを含みます

石田スイ原作の同名漫画の実写版。
人を喰らって生きる“喰種(グール)”が存在する東京を舞台に、喰種になってしまった元人間の主人公が観た喰種の世界を描く。

美食家グールである月山習の登場と対決を描いた本作だけど、1作目よりも物足りないかな。
というか、映画として中途半端に感じてしまった。
原作からエピソードを切り出すならこの月山とのバトルをひと区切りにする気持ちは分かる。
分かるけど、原作の様に大きな話の中の1エピソードならともかく、1本の映画としては話がストレートすぎてひねりが足りない。
「月山がヤバそう」「やっぱりヤバい」「倒した」、それだけの話だし。
エンドロール中で、劇中に暗躍していたピエロ(宗太)がマスクを外して観客への続編につなぐサプライズ効果を出そうとしていたけど、「これでようやく『転』になるんだから、それなら今作の中で『結』までやり切れよ」と思ってしまったくらいだなあ。

というわけで、月山との対決だけだと自分にはどうにも消化不良でした。

それでもそんな話を一本で纏めるために、「人間と喰種に親密な間柄が成立するのか」というテーマを用意してはいる。
まあそれも原作にある流れだけどね。

ところがその話を印象付ける要素であるトーカとその友人・依子の弁当のくだりが、妙に改変されているのが気に入らない。
トーカが喰種であることを知らない依子は、学校で食事をとらないトーカを心配しておかずを分けようとするのだけど、人間の食事を受け付けない喰種のトーカはそれを断るのだよね。
それがあまりに拒絶的で、それは友達の思いやりに対する態度ではないだろう?と、嫌な印象しか受けなかった。
原作のトーカは依子の気持ちをおもんばかって無理にでも食べていたのに。
極めつけは「あんていく」でバイト中のトーカのところに持ってきた依子の弁当をはじき落とすシーン…。
バイト先に持ってくる依子もどうかとは思うが、さらに輪をかけてトーカの態度が悪い。
これが友人に対する仕打ちか?というか原作とはまるで真逆の流れ。
トーカがカネキに言った「ヒデと縁を切れ」という台詞に合わせてそうしたのだろうけど、自分には理解できない改変だった。
そこはそれこそ原作通りで良かったじゃないか。
だから、ラストでトーカが依子の弁当を食べて微笑むシーンが薄っぺらくしか感じられなかったなあ。
どういう友情だよ?って。

別に自分は原作至上主義者ではないけど、原作で見せたトーカの優しさを消してまで「人間と喰種」の相容れない部分を強調しては欲しくなかったとは思うのです。
改変するならそういうキャラクターの印象に関わる部分ではなく、月山との対決に至る話の流れの方にしてほしかった。

ちなみにアクションシーンは相変わらずワイヤーでふわふわ。
トーカ役は前作の清水富美加から山本舞香に交代しているけど、空手経験者の山本舞香の動きはいいね。
難はアクション自体の見せ方というか演出の方かなあ?
肉弾戦はともかく赫子はやっぱりCG的な軽さはあると思うし、「その間合い?」と思うような場面もある。

月山役の松田翔太はエキセントリックな月山を頑張って演じているとは思うけど、アニメで宮野真守が演じてた時のテンションを聞いてしまうとなあ…これは分が悪いw
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