トモ

家族のレシピのトモのレビュー・感想・評価

家族のレシピ(2017年製作の映画)
4.8
家族のレシピ

90分間無駄なシーンが一切無い映画だった

日本とシンガポールの外交関係樹立50周年(2016年)を記念した作品

高崎の実家のラーメン屋で働いていた真人(斎藤工)は父親(伊原剛志)の急死で遺品から見つかった既に亡くなっているシンガポール人の母の日記、それを手に両親の足跡を追ってシンガポールに渡る

そこで真人は幼い頃面識のあった母親の弟とその家族、祖母、交流のあったシンガポール在住日本人フードブロガー美樹(松田聖子)に出会い、両親の出会ったきっかけであるバクテーを含め自分のルーツと向き合っていく

足跡を辿る過程でシンガポールと日本にあった辛い戦争の歴史や、今でも根強く存在する人々の思い、それに影響を受けた両親の辛い過去を目の当たりにする

真人にとっては理不尽と思える両親への仕打ちも、戦時中に受けた相手側の深い傷を思えば相容れない深い溝になるのがよく分かる

だからこそ歴史を知って理解を深めて許し合う事を徐々にでも(してきた歴史や)してゆく大切さを食を通して描く今作に引き込まれた

両親の回想シーンが至るところで挿入されるんだけど映像で感じる時代の差が少ない事から、常に真人に寄り添っている(真人が肌で感じるような)雰囲気がしてとても良かった

この作品が父親のラーメン屋で父親と一緒に働くところからスタートしたのも父親の人物背景を際立たせるものになってる

ブロガーの美樹とその息子との絡みがあるのも真人と母親との思い出に重なる重要なシーンとなる

そして家族の温かみの象徴となる叔父(真人の母親の弟)の家族

この作品に明るさをもたらす喋り過ぎる叔父のキャラ

真人が思い馳せる母親の美しさ

この作品で重要な祖母との和解等、全ての大切な要素が省かれる事なく繊細に、時に想像をあおるように描かれた作品

作り手だけでなく俳優陣が制作に精通した人の集まりだったのも物語の密度に繋がったのかもしれない

とても良い作品
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