このレビューはネタバレを含みます
特殊メイクを施したニコール・キッドマンの怪演は度を超えたものがあり、それはそれで見どころではありますが、周囲のキャラクターの印象が弱すぎてバランスがまったく釣り合っていないのは食い足りなさの原因かと思います。
せめて悪役キャラぐらいは強烈な魅力を放っていて欲しいのに、N・キッドマンの気迫に負けてしまっています(彼女の気迫に負けないことは至難の技とは思いますが…)。
トリックを使った構成も、かえって人間ドラマを散漫にさせてしまったようにも見えます。もっとストイックなドラマに徹した方が演技の熱量とも合致したのではないでしょうか。
ただ、セオドア・シャピロによる優美な音楽とスローモーションの情感たっぷりなラストシーンは好きです。
愛する人も、その後のあり得た幸せも、人間性もすべて失ってしまったかに思えた女に残されていたもの。安らかな光が降り注ぐ光景は、とても美しく感じました。