ルーク大佐

ストレイ・ドッグのルーク大佐のレビュー・感想・評価

ストレイ・ドッグ(2018年製作の映画)
3.8
世の中には美人の汚れ顔にフェティシズムを感じる人もいるようだが、そういう趣味は持ち合わせていないので、前半はニコール・キッドマンの野良犬じみた三白眼に悪寒を抱き、気がノレなかった。

過去に潜入捜査官として銀行強盗に加担し、そのときに背負ったトラウマが現在の破滅的な生き方を引き起こしていることが次第に見えてくる。

実の夫や娘との関係だけでなく、原題「Destroyer」のとおり、自分自身もぶっ壊す生き方。周囲との人間関係も崩壊状態。
17年前の潜入捜査をひとりで再捜査するうち、彼女は悪党に舐められ、ブチのめされたりもするのだが、その行為を甘んじて引き受けているような感すらある。あたかも贖罪であるかのように。

女性刑事が主役のハードボイルド作品の亜流を目指しているのかな、と見続けていると、ノワール一辺倒ではなく、叙述トリックを用いてきた。この展開は驚いた。

ネタバレで終わるのではなく、新たにふたつのシークエンスを挟んできたので、ちょっとクドいなと思っていたら、あんな最期で幕を閉じるとは。

青い空。飛び交う鳥。ブルーアイズ。スケボー少年。
音楽まで感傷的なシーンにかぶせてきた。女性監督のセンスかな。

野良犬刑事がはじめて過去の因縁を断ち、いままでぶっ壊してきた関係を修復し、命の火を消すことでようやく自己解放を達成したのだろう。
あまり見かけないタイプの野心作だ。
ルーク大佐

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