kkkのk太郎

アド・アストラのkkkのk太郎のネタバレレビュー・内容・結末

アド・アストラ(2019年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

宇宙開発が進んだ近未来を舞台に、ミッション中に行方不明となった父・クリフォードを探す宇宙飛行士ロイの心理を描き出すSFドラマ。

主人公ロイ・マクブライドを演じるのは『セブン』『オーシャンズ』シリーズの、オスカー俳優ブラッド・ピット。なお、ブラッドは本作の製作も手掛けている。
ロイの父で伝説的な宇宙飛行士、H・クリフォード・マクブライドを演じるのは『メン・イン・ブラック』『キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー』の、オスカー俳優トミー・リー・ジョーンズ。
ロイの別れた妻、イヴ・マクブライドを演じるのは『アルマゲドン』『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズのリヴ・タイラー。

この映画を一言でいえば、超壮大なスケールで描かれたメーテルリンクの「青い鳥」。
地球から40億キロ以上も離れた海王星まで、失った心のピースを探して旅立ち、結局それはすぐ近くにあったのだということを発見する物語である。
ミドルエイジ・クライシスについてのアレゴリーのような映画であり、暗澹とした宇宙の闇はそのままロイの心の闇を表している。

アンジーとの夫婦生活が崩壊してからというもの、ブラピが演じるキャラクターは大体どれも鬱病ぎみ。
この映画を撮影していた頃が一番精神的に参っていたのだろうか、本作のロイが抱える葛藤はもうそのまんまブラピ本人の抱えているそれと同じであるとしか思えない。
「なぜ(俳優を)辞めない?なぜ(俳優を)続けている?」とか「一番素直になるべき時に素直になれなかった(だからアンジーが出ていった)」とか「夢を叶えたはずなのに全然テンションが上がらない…」とか、もうこれ完全にブラピ本人の心の声だろ…😅
本作には度々セラピーを受けているシーンが出てくるが、この映画自体がブラピの自己セラピーであるように思えてならない。

そんな映画なので、全編に渡ってひたすら暗い🌀
辛気臭いブラピが辛気臭いBGMとともに辛気臭い冒険に旅立つ。
月面でのカーチェイスや凶暴化したサルの襲撃など、ところどころでアクションやスリラーを交えてはいるものの、それが映画の面白さには繋がっていない。
淡々と時間が流れる作品であり、お世辞にも面白い映画とはいえない、というのが本音。

SFオタクではないので本作の内容が科学的に正しいのかどうかはわからないし、別にそんなことに興味はない。
ただ、そんな素人目にもこれなんかおかしくね?というところがちょこちょことあって気になってしまった。
特に疑問だったのが海王星に到達するまでの時間。海王星って43億キロくらい離れているんでしょ?作中では3ヶ月くらいで到着していたけど、そんなに早く着くの?だって時速3万キロぐらいで進んでも10年以上かかる計算になるし…。
『インターステラー』(2014)のように、ウラシマ効果で自分と地球では流れている時間が違う、という可能性も考えたけどラストの描写を見る限りそうでもないし。
あの時代には超すごいエンジンとかワープ機能とかが存在してるのか?それにしては離着陸の感じに未来っぽさはないし。なんだかなぁ…。
故郷から遠く離れ過ぎたせいでクルーたちの気が狂ってしまった、とか言ってたけど、3ヶ月程度で行き来出来るんだからそんなに思い詰めなくても良いんじゃ…。いや、本作が寓話であるいうのは理解しているのだけど、なんだかなぁ…。

あとこの映画の宇宙軍、高齢化が進みすぎてやしませんか😅
前人未到の知的生命体探査ミッションの艦長がトミー・リー・ジョーンズって…。いくらなんでもジジイすぎるだろっ!!下手すりゃミッション中に老衰しちゃいまっせ。
ロイのお目付け役だったプルーイット大佐もジジイすぎるっ!結局途中で離脱しちゃうし、なんだったんだこの爺さん…?
ああ、宇宙軍には若くて有能な人材がいないのだろうか…。

トミー・リー・ジョーンズも、プルーイット大佐を演じたドナルド・サザーランドも、『スペース カウボーイ』(2000)で老宇宙飛行士を演じていた。この映画を念頭に置いてのキャスティングだったのだろう。
また、地球外生命体の捜索に命をかけるクリフォードをトミー・リー・ジョーンズが演じるというのは『メン・イン・ブラック』への目配せなのかもしれない。
ロイの妻をリヴ・タイラーが演じているというのは『アルマゲドン』リファレンスかな、とも思うし、全体的にこの映画のキャスティングはパロディっぽい。
クソ真面目な映画なのに、キャスティングだけはパロディ映画みたいなことになっちゃってるのはなぜなんだろうか。
それならもういっそのこと、主人公もブラピじゃなくてマット・デイモンとかマシュー・マコノヒーにしちゃえば良かったのに。

クライマックスがハッピーエンドっぽかったのもなんかモヤモヤ。だってロイが無理矢理ロケットに乗り込んだせいで3人のクルーが死んじゃってるし。軍法会議も已む無しな暴走だったと思うけど、ミッションには成功したわけだからお咎め無しだったのかなぁ…。ロイは希望を見出せたから良かったかもしれないけど、それじゃあ死んだ3人は報われないよね。

映画というよりは小説に向いている物語だったような気がする。モノローグも多かったし。
宇宙を舞台にした”小さな”映画があっても良いとは思うが、細部のネジの緩さが気になった。
宇宙を使ってパーソナルな物語を描いた映画といえば、デイミアン・チャゼル監督の『ファースト・マン』(2018)が先行作品として思い浮かぶ。
『ファースト・マン』に比べると、面白さも完成度も劣ってしまうというのが素直な感想である。

とまぁ文句ばっかり書いちゃったけど、実はそんなに嫌いな映画ではない。
確かに面白くはなかったけれど、絶望の果てに希望を見出すタイプの映画って個人的に好みなんです。
名撮影監督ホイテ・ヴァン・ホイテマによる映像美も見応えがあったし、まぁ観て損はないかな。

『ザ・ロストシティ』(2022)や『ブレット・トレイン』(2022)など、最近は能天気な映画にも出演するようになってきたブラピ。かと思えば『バビロン』(2022)ではまたも鬱病のオッさんを演じている。
出演作品がまるで躁鬱病のようになっているブラピだが、今後は一体どういう方向性に進むんだろうか。。。
未だに騒動がおさまっていないブラピvsアンジーの離婚問題。スターも大変なのである。
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