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アド・アストラのevergla00のネタバレレビュー・内容・結末

アド・アストラ(2019年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

【瞑想映画】

劇場公開中からあまりに低評価で…
迷いましたが、むしろ気の毒になってきたのと、好奇心も一層湧いてきて鑑賞することにしました。

時代は近未来。
飛行機に乗る感覚で、月や火星に比較的気軽に行けるよう。
月はもはや地球化しつつあり、資源の奪い合いで紛争地帯まである。
主人公Royは宇宙軍に属する宇宙飛行士。
過去最も活躍した飛行士として名高い父は、地球外生命体の探査中に消息不明に。

設定は結構良いと思いました。
宇宙から地球への落下、月での銃撃戦、凶暴な実験用動物は、科学的な考察は出来ないけれど目新しく感じました。
そして日頃から平常心を保つよう訓練され、一切の感情を失いつつあるベテラン飛行士Roy。本当に何があっても動じない😊。素晴らしい状況判断力と適応力。飛行士としてはこの上なく優秀な彼ですが、心は開かず頭の中で冷ややかに周囲の人間を観察。ただ淡々と任務を遂行しているだけで、使命感のような熱いものはないし、逆に嫌々という感じもない。

Royはなぜここまで自分が飛行士を続けるのか、宇宙開発に携わり続けるのか、恐らく潜在的には納得出来ていなかったのだと思います。偉大な父親の跡を継ぐ、周囲の期待に応える、父もプライベートを犠牲にしたのだ、それが当然なんだと思い込んできたのでしょう。でも父親の記憶は子供の頃のものだけ。実際どんな人間なのかよく知らないと語っていました。父親の足跡を辿るも…その先が全く見えてこない日々に、突然父親の存命を知らされる。消えかかっていた目標が存在していたというのは、相当な衝撃だったのではないでしょうか。2度目のボイスレターで蓋をしていた父への想いが溢れるシーンは、Royの心から静かに感情の雫が滲み出てくるようでした。

比較対象として適切か分かりませんが、行けないと思っていたオリンピックに行けることになったら、選手は何が何でも行こうとするように、こうなったら何としてでも目標としていた父親を目指そうとするのは当然の心理だと思います。長年地球を留守にして、父はどうしているのか、完成形の父の姿をこの目で確かめたいと…。

ここまではまぁ良いのですが…、親子共々、周りを巻き込み多大な犠牲を払わせることになっても、計画を省みないし中止もしない😣。初志貫徹?いや、頑固一徹?

父親は、地球外生命体に執着。
息子は、宇宙に消えた父親に執着。

信念という名の妄執。

最後は両者共その対象から心を解き放って己を自由にできるのですが。

43億キロ彼方まで来て、言うことを聞かないパパに手こずる息子の姿にはちょっと苦笑。

もし父親の動機が、愛する息子の期待を裏切りたくない、いつまでも坊やのヒーローでいたい!世紀の大発見なくして帰還なんて出来るものか!!というものだったら、息子がどんなパパでも愛しているよっと言って父親を自由にしてやることにより、長〜い宇宙の旅も感動的で極めて有意義になったと思うのです。

目標があるから、頑張れる時がある。
なかなか到達できないほど、達成感もある。

人生を懸けて挑んだのに、何も見つけられなかったら?多くを犠牲にしたからこそ、欲しい結果を得るまで引き返せないのか?
…何もないことを証明するのも大発見なのに。

どんな時でもcrewを守れない船長なんて、言語道断。究極の孤独に追い詰められたなんて自業自得。

憧れの人が実はクズだったり、
人生思うように行かなかったり。
Royの旅路はある意味興醒めするほど現実的なのかも知れません。
しかし、結局どれもこれも人災だし、頑張ったけれどダメでしたっていうオチを映画の中でも再確認させられると、夢も希望もないというか…。

父親の意識は宇宙人に乗っ取られていた、なんて方がまだ救いがあったかも?!

パパ、食料はどうしていたんでしょ。

宇宙飛行士ほどの大役でなくても、面倒を察知しないようアンテナを引っ込め、感情を抑えて生きている人は少なくない気がします。満員電車なんてそうでもしなければ耐えられません。Royの思考回路は共感出来る所もありました。
父親の面影を太陽系の果てまで追って、実物を目の当たりにして、悔いなく残りの人生を地球で送れることでしょう。百聞は一見にしかず。

交替した(元副)船長、あの度胸レベルで核なんて運んで欲しくないです🙄

映像や音楽は素晴らしいので、大画面に大音響で鑑賞した方が良さそうです。逆にそこを堪能できないと…観客も瞑想と夢想の旅に…。
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