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アド・アストラのpikaのレビュー・感想・評価

アド・アストラ(2019年製作の映画)
4.0
SF大作最高!宇宙トリップ最高!良かったところも物足りなかったところも色々あるけど、あれこれと考えあぐねることそのものがめちゃんこ楽しい。
SFで精神の内面世界を語る系統の映画がど真ん中なので当然とばかりに刺さりまくったが、だからこその物足りなさもあって、同系の傑作たちと比較してしまったり、オマージュか引用かそれらのイメージが映画の中であちこちに出てくるもんだから彷彿として無視もできず映画と真正面から向き合いづらいところが。
敢えてそうしたとしか思えないような出し方で『2001年宇宙の旅』『惑星ソラリス』『地獄の黙示録』をイメージさせられる。こういう場合、それらのイメージを使って作品を語る際の手間を省いているということなのか、なぜ引用したのかっつー要らん疑問まで浮かび上がる。作品そのものには影響しなくとも引用として『ソイレント・グリーン』『ダーク・スター』があるのも引っかかる。ムード的に入れなくてもいいだろうにちょいダサな目配せに見える。
これ3時間のディレクターズカットが存在するんじゃないだろうか。後半の旅路が肝であるはずなのにあっという間に終わる。この後半だけで1時間使ってもいい、むしろやってくれと思う。ここまでやっておいて最後の最後で観客を意識したドラマ展開の帰結の方へ重点を振り切ったのは何故か。いや、勝手にこちらがそう意識していただけで最初からドラマなのか。だから映画的に保たない後半の旅路を省略したのか。うーむ。有りか無しかは感性によるところだけどそれで言うなら『もったいない』だなー。ここまでやったんだからやりきればよかったのに。ビビって収めたように見える。というかオマージュと引用で傑作群をイメージさせまくってるんだからそっち系なのかなと勘ぐるじゃんか!それなのにドラマで締めちゃう?いや、二番煎じをしても仕方がない、それら傑作群を超えてやるというグレイとブラピの熱さ迸る熱意なのかもしれん。とりあえずあと最低でも3回は見ましょうか。

ファーファー鳴ってる序盤の音楽には若干ガックリしたけど中盤以降はシンセベースで『地獄の黙示録』を意識したのか、ムード満点ですごくよかった。機械音といい感じに混ざり合っている。
近未来の宇宙旅行描写を(科学考証云々が話題にはなっているが)ファンタジーに振り切らず現代の技術から地続きなリアル路線で見せてくれたのは凄く良かった。省略しがちな設定描写を丁寧に見せてくれて感謝。見ているだけでゾクゾクした。この前半の描写は何度も見たいくらい好き。

火星の所長とすれ違うときにフォーカスが切り替わるくだりはグレイ演出の醍醐味だなと感じたが逆にそこ以外にグレイ作品だと意識せずに見ていたので新鮮な感覚だった。作家性が強そうな方向の映画であるのにその存在が消えている。

瞼の筋肉をピクつかせるブラピの演技凄い。事象の反応をドアップでしかもほぼ無表情で逐一映しているところに『地獄の黙示録』のマーティン・シーンがチラついたりもしたが、日常的に精神状態の確認をする設定にして心情をベラベラ喋っちゃってるのは勿体ない。モノローグがあるのにその設定もあってごちゃごちゃしている。

2019.9.24【1回目】映画館
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