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連鎖のmofaのレビュー・感想・評価

連鎖(2018年製作の映画)
3.5
【自分の負の連鎖の一部になる
可能性を否定できない】

もう、初めから、嫌な予感しかしない映画って、たまに、ありますよね。
 まさに、そんな作品です。

始めは、微笑ましい場面の連続なのに、
とても危なっかしい。
 
そんな風に感じてしまって、思わず、
「これも偏見なのか??」って自分に
問い掛けてしまった。

この映画を私の中で、
「胸糞悪い映画」で片付けられないのは、
私が、この主人公ソックへの仕打ちを、
簡単には非難出来ないからかも知れない。
ひょっとしたら、「負の連鎖」の始まりは、私になるかも知れない。

私はそんな事しない・・・・と言いきれない難しさがある。

キム・デミョン様がとにかく、凄いね。
8歳の知的障害の役を、見事に演じておられました。
本当に、凄いと思う。

 是非、心も体も調子の良い時の視聴を、おススメします。


↓↓↓以下ネタバレです。

正直、自分がキム先生の初めの対応を、
完全に否定するのは、
綺麗ごとのような気がする。

私でも、ウンジとソックがあれほど仲良しになってしまうと、
ちょっと心配な気持ちになってしまうから。

何故なら、知能は8歳でも体は大人であり、
8歳で無知が故に、危険な事もあると思うんですね。
 性的な問題だけではなく、
子供同士の喧嘩になった場合、
知能は8歳でも力は大人の男っていう点において。

だからこそ、
見守る必要があったんだと思う。
ソックが誤解されないように・・・・
キム先生も、2人の関係を危惧するならば、
夜は出歩かせないなど、指導すべきだったと思う。
それは、ウンジ自身を守る事であり、ソックをも守る事なのだと、
言い聞かせるべきだったと思うし、
私なら、絶対そうしたと思う。

 ウンジが夜な夜なソックと出掛けても、
何の手立ても講じなかったのに、いざ、そういう場面に遭遇したら、
鬼のクビを捕ったかのよう。
 その後も、自分の思いこみだけを通そうとして、
急にウンジの母親になったような態度に、
うんざりしたし、ウンジを守る云々よりも、
自分の正義だけを突き通そうして、全く共感出来なかった。

 ソックをよく知っている神父様の話に耳を傾けたり、
何故、ウンジの話を聞かないのか・・・という苛立ちもあるし、
何より、ウンジを本当に苦しめているのは、
ソックではない事に気付いたはずなのに・・・・。
 
一人の青年の人格も、その生活も破壊していながら、
そういった所を完全に葬って、これからも正義感顔して生きていくのかと思うと、
何ともいえない空虚な気持ちになる。

そして、それはキム先生だけではなく、
ソックへの態度を翻した友人たちにも、同じことが言える。
彼らは自分たちが正しいと思って、これからも生きていく。
人間というのは、本当にズルい生き物だと思う。
 けれど、どうだろう・・・
もし、キム先生が、自分の信頼している友人だったとしたら??
私は、キム先生の言う事を
丸っと信じ込んで、
ソックへの怒りを感じてたかも知れない。

私は、正しい道を進みたいと思うが、
人からの影響を受け、また、
与えながら生きている身としては、
果たして、どれほど正解の道を歩めていけるかは疑問。
本当に、浅はかで馬鹿げているけれど。

ソックは、友人たちが去り、
得体の知れない「孤独」を
感じていたに違いない。
 誰もが背を向けていくのに、川の魚たちは、自分に寄り添ってくれる。
それが、嬉しかったのかも知れない。
だから、より、深みへ。
 魚たちが、自分を癒してくれるから。

 あの雨の日、もし見つけたのが、
神父様だったら?
友人たちだったら?
 事態はこんな事になっていなかった
と思う。
そういう意味では、
本当に「負の連鎖」であり、
救われない。

ウンジが、もう少し、状況を説明出来ていたら・・・とも思うが、
義父のせいで、完全に大人への不信感があるんだと思う。
 義父のことを、母親にも伝えたのかも知れない。
 けれど、彼女の言葉に耳を傾けなかったのかも知れない。
 キム先生にも心を開かず、シェルターにも自分の居場所がなく、
ウンジにとって、ソックだけが彼女の聖域だった。

自分の声を聞こうとしない大人たちから、
ソックを守ろうとしたんだと思う。
 彼女なりの方法で。
ソックを友人じゃないと言い放つウンジの後ろで、
おちゃらけて、
パンを食べるソックには、涙しかなかった。

僕を見て。
僕を見て、ほほ笑んで。

ソックの求めるものは、8歳の子供が求めるものと同じだ。
自分を見て、自分に微笑んで、
自分を無条件に愛してくれる人。

たった一人で、幸せに、
静かに生きてきた人が、
こんな結末を迎えるのが、
切なくてたまらない。

 そして、私自身も、
その「負の連鎖」の一部になる可能性を、
真っ向から否定できない悲しさと無力さが、
ずっと後をひく。

けれど、その「負の連鎖」の中に、
それを、ひっくり返すチャンスもある事を忘れないようにしたい。
ソックを心配するおじさんや、
ソックを助けたいと心の片隅で思っている友人。
ウンジを苦しめているのは義父だと気付いたキム先生。
その時に、勇気を出せば。
事態は、逆の連鎖を生んでいたかも知れない。

そして、何よりも、ソックを見守る温かい視線が必要だった。
ソックがトラブルに巻き込まれないように。
ソックが、川の深みへ行かないように。
 そんなあたたかな視線がある
社会になって欲しい。
せめて、そういう社会に向かって歩んでいるのだと思いたい。

キム・デミョン様の演技は、
本当に素晴らしかった。
ジウンの病院で、こっちを見て欲しくて、
おちゃらけてパンを食べるシーンは、
子供が母親の気を引くようであるし、
そこに、全くの違和感がない。

特筆すべきは、最後の表情。
川の深みに身を置いて、恐怖にうろたえる。
視線を振って、探すのは、
母親だったのか、神父様だったのか、友人だったのか。
けれど、誰も助けてはくれない。
恐怖と混乱、見開いた視線がしばらく頭から離れなかった。
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