ハンスウ

ビューティフルデイズのハンスウのレビュー・感想・評価

ビューティフルデイズ(2018年製作の映画)
4.0
この監督の映画を観るのは2本目ですけど2本とも主人公は脱北者でした。脱北者に興味があるのか、脱北者が脱北した後どのように生きているのか、いかに過酷な道を辿るのか、そういうことをたぶん取材して自分で脚本書いて劇作品を作り上げているのでしょう。フランスとの合作になってます。フランスに留学経験があって人脈があるのかもしれませんね。地味なインデペンデント的な作風で、韓国でもおそらくミニシアターレベルの公開なのか観ている人も少ないようです。

演出では余計なものを撮らないところが好感持てます。暴力やセックスが過剰に、露骨になりすぎないように、たぶん脚本の時点でうまく端折りながらな、なおかつそのストーリー上で起こったことが観ただけでわかるように映像が作られていました。端折ると言っても明らかに「手抜き」とは違う作業で、最小限の表現で大きな効果をもたらす。たとえば登場人物の心を突き刺す。それは観客の心に突き刺さることにもなっていたと思います。

しかし、この映画のどこにもビューティフルデイが見当たらない……。脱北して中国に落ち着いた家族の生活はどこまでも貧しく、脱北を自分の欲を満たすための金儲けとしか思っていない男からは執拗に狙われる。訳あって、母親だけが韓国に渡って暮らすことになったが、どこにも笑顔がない。これらの鬱屈とした脱北者たちのその後の描写は誰が何をしても救いがないように見える。でもこの監督はこの後に作った「ファイター、北からの挑戦者」という映画でもそうだったけど、結局は苦労続きの脱北者たちに救いを用意したいっていう思いがある人なんだと思います。じゃあ、今作の映画のタイトルはいったいなんなのかというと、ビューティフルデイズというのは未来のことを言いたかったんだなあっていうのがラストシーンでわかるようになっていました。やさしい監督なんでしょうね🙂
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