Omizu

ザ・リバーのOmizuのレビュー・感想・評価

ザ・リバー(2018年製作の映画)
3.6
【第75回ヴェネツィア映画祭 オリゾンティ部門監督賞】
新作『ライフ』が東京国際映画祭コンペに出品されているカザフスタンの新鋭エミール・バイガジン監督作品。

MUBIの作品紹介文にもある通り、設定や話の骨格はランティモスの『籠の中の乙女』そのまま。父によって社会から隔絶されて育った子供たちが、ある日外部に触れることによって「理想」が崩れていく。

『籠の中の乙女』と違うのは外部から来た男の子カナットに対して父もそこまで厳しく管理していないこと。そして何よりカザフスタンの広大な自然というロケーションだろう。

タイトルの川の美しさもさることながら、崖や砂漠などが非常に美しく捉えられている。この撮影を眺めるだけでも観る価値はある。

とにかく構図の美しさが目を引く。二つの窓を捉えたショット、崖の上に立つ5人の子供、強い流れの川で泳ぐ子供…どれも一つ一つが芸術だ。

一方で話運びは「こんなに2時間を長く感じたことはない」というくらいスローペース。正直新作『ライフ』が3時間でしょ?このペースで3時間はキツくないかな、とは思う。

でも遅いから悪い、とは思わない。こういう作家性なんだと納得できるくらいそのスタイルを確立できているから。

闖入者カナットは彼らにとっても神か悪魔か。監督は「無秩序を生み出す風のようなモノ」と言っている。カナットによってそのコミュニティの秩序は崩壊し乱される。これは三部作だが、それまでの二作と違って「開放」の物語であると語っている。

かなり人を選ぶ監督だとは思うが、とりあえず新作を楽しみにしたいと思う。今の時点では保留。
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