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シレンズ・コールのlpのレビュー・感想・評価

シレンズ・コール(2018年製作の映画)
4.0
東京国際映画祭にて鑑賞。

コンペ9本目はトルコの『シレンズ・コール』。
トルコ映画の劇場公開は、ヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督の『雪の轍』が、カンヌを制したことでようやく劇場公開されたぐらいで、普通のトルコ映画が劇場公開されることは滅多になし(残念ながら、昨年コンペを制したトルコ映画の『グレイン』も公開予定が無いようで・・・)。そんな訳で、今作も映画祭の機会を逃したら、もう観られないだろうということで鑑賞。

そしてこれが「見逃さなくて良かった」と感じられる、思わぬ拾い物だった!
イスタンブールを脱して、田舎で牧歌的な生活を送りたいと願いながら、何故かなかなかイスタンブールを脱することが出来ない男の物語。
スラップスティック的なコメディがベースにありながら、背景に置かれた「資本主義の膨張」や「牧歌的な生活への憧れに対するアンチテーゼ」などの時代を映したメッセージは、映画からしっかり伝わってくる。また、主人公の男がイスタンブールを奔走する中で出会う人々の姿を通じて、現在のイスタンブールにおける「格差社会」も浮き彫りになる。これだけでもう、観る価値は充分だ。

また、今作に盛り込まれた社会派の要素は、単なるメッセージに終始せず、主人公の成長を促す点も素晴らしい。
イスタンブールを奔走し、その果てに辿り着いた場所での出来事。主人公が「社会」と向き合うプロセスの全てが、主人公の「成長」へと繋がっていく。しかもスラップスティックコメディ的な面白さで、エンターテイメントとしての要素もバッチリ。この練り込みは凄い!

昨日の『テルアビブ・オン・ファイア』に続き、今作もまた何か受賞する可能性は高いのではないだろうか?少なくとも、個人的には受賞を期待したい!オススメ!
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