けまろう

シレンズ・コールのけまろうのネタバレレビュー・内容・結末

シレンズ・コール(2018年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

『シレンズ・コール』鑑賞。都市から逃げ出そうとする男が都市から逃げられないという超現代的ホラー。逃げ場がない現代人の実態をブラックコメディーで描いた作品。
さまざまなトラブルで空港に辿り着けない主人公タフシンは、イスタンブールという魔都における迷子。仕事にも身が入らず、妻とも不仲で離婚調停中。近代的孤独の中にあって、建築家として魔都の建造を手がける立ち位置にあった。
ある夜バーで再開した旧友のシレンに、田舎でのロハス的な生活を説かれイスタンブールからの脱出を決意する。この決意の動機が少し弱い気がするけど。
会社に悪態をついて空港に向かおうとするも、あらゆる障害が彼の移動を妨げる。車とスマホは没収されるし、バスのチケットは発券されないし、チンピラには絡まれるし、という何とも都合のいい災難が襲う。このドタバタ逃亡劇がとにかく笑える。
クライマックスのシーン、諦めて引き返す夕日に照らされたタフシンの後姿。大都市という化物に飲み込まれていく、何とも恐ろしいカット。
最終的にイスタンブールから脱出するも、待っていた先も資本主義的な序列社会だった。逃げ出そうとするタフシンの元に来るのがシレンの電話(シレンズ・コール)だ。ここでタイトルの意味が明らかになる演出が好み過ぎる。シレンズ・コールとは、資本主義の組込みへの要請なのだ。
そして今度は別の女性から島に来ないかと誘われ(シレンズ・コール)、どこへも逃れられないことを悟ったタフシンはイスタンブル行きの飛行機に乗るのであった。
映像の画質が微妙に悪かったのは敢えて?光で白く飛んだりなどが気になったが、逆にリアリティを感じられた。
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