てつこてつ

三人の夫のてつこてつのレビュー・感想・評価

三人の夫(2018年製作の映画)
3.2
WOWOW視聴。これまた凄い怪作。フルーツ・チャンってこんな作品も撮るんだな。

人並み外れた性欲を持つ一人の若い女性。水上生活者の彼女は年老いた父親の商売道具として毎日行列が出来る程の客を相手に己の身を売る。

そんな彼女の常連客でもある一人の若い男性は、彼女を正式に嫁に迎え、実母と共に陸上での生活に身を移させるが、彼女の性欲は留まるところを知らず、レストランでの食事中にも夫の股間に足を伸ばし、人々が行き交う交差点に停めてある大型トラックに荷台でも日中から性行為に及ぶ始末。

港湾労働者の仕事をクビになり生活に困り果てた夫は、妻と共に、彼女の実家である船に移り住み、再び、父親らと共に妻に客を取らせるようになる・・

冒頭から炭火の上で焼かれながらなまめかしくうねりまくるアワビを女性器のメタファーとして登場させたり、ヒロインの毎日性行為を行わないと満足出来ないほどの異常な程の性欲の強さを医師がパパイヤの断面で説明するなど、演出が極めて大胆。

「三人の夫」というタイトルのネタバレは中盤になされるが、とにかく彼女の性欲を満足させようと、スマホのバイブレーター機能を使ってみたり、昔Panasonicが発売していた乗馬型健康マシーン「ジョーバ」のようなマッサージ器に跨がらせてみたり、老人が義手の先端部分を抜き出し棒のように固まってしまった腕を突っ込んだり、挙げ句の果てには巨大な生きたウナギを頭から陰部に挿入させたりと、とにかく描写が生々しい。

ヒロインの乳飲み子を顧客が抱きかかえながらの性行為の描写など、元々なのかお決まりのWOWOW補正なのかモザイクはしっかりかかってはいるものの、そこはきっちりR-15。でも、作品全体としては個人的にはR-18のレベル。

但し、安っぽいロマンポルノではなく、フルーツ・チャン監督ならではの拘りの演出が全編に光っており、アーティステイックな作品とまでは言えずとも、しっかりとカルト映画の分野には留まっていて、それなりのメッセージ性が感じ取れる。

中盤以降、突然、全編モノクロカラーとなり、ヒロインが纏うマントだけが、例えて良いのか否か微妙なところだが「シンドラーのリスト」の少女の靴に色の如く真っ赤に描かれていたり、ヒロインが性行為の際は、まるで獣のように喘ぐのと対象的に、美しい金魚が群れて踊る水槽に顔を入れてみたり、影絵にはしゃぐ様子は、まるで無垢な少女のような表情を見せる。

そう、このヒロインを演じた女優さんの存在感は圧倒的。飛び抜けた美貌ではなくとも、幼い少女のような表情、それに対比するかのように、まるでボッティチェリが描く裸婦像かのごとく圧倒的にボリューミーで肉感的なボディライン。100万人に1人が持つ名器だと医者が説明する下りがあるが、それもどこか納得できるエロティシズムに溢れたなまめかしい美しさ。

女性視聴者がこの作品をどのように受け取るのかは皆目見当が付かぬが、個人的には、アクション映画はもちろん、ウォン・カーウァイが切り開いたアーティスティツク路線の映画とは、ひと味もふた味も違う、先日見た「ユートピア」同様、このようなカルト分野の作品も手掛ける香港映画の懐の広さは魅力的。

個人的に面白かったのは、老婆が婚期を迎えた自身の息子に対して、「銀杏を食べ過ぎると夢精するよ。学校で習っただろう」っていう一言。各国、各文化によって、色んな性にまつわる言い伝えってあるんだなあと。
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