晴海通り

ホワイト・クロウ 伝説のダンサーの晴海通りのレビュー・感想・評価

3.6
自由への跳躍。

今も東欧圏から天才的バレエダンサーが現れるとヌレエフに例えられる。その体躯もあって“洗練された”とは表現し難いが、彼の踊りは、そのほとばしる熱は、まさに舞台を制する。「凄いものを見た」とストレートに感じさせる。バレリーナの添え物的存在だった、見せ場の少ないソリストに革命を起こした人。

しかしその踊りが世界に広まるには、この亡命劇が必要だった。ただ踊りたかっただけの彼がなぜこんなにソビエト国家から目をつけられたのか分からないが(良くも悪くも目立つ人だったのだろう。ちょうど白いカラスのように)、23歳にして彼は自らの運命を切り拓いた。50歳過ぎでその輝かしい生命が尽きるまで、彼はパリで、ロンドンで、バレエに情熱を捧げ続けた。

彼が走る列車の中で生まれたことや、気性が激しかったこと、セクシャリティ、ロシアの少数民族だったことなどうまく纏まってたと思います。が、一方で彼の半生を知らないとエピソードの行き来が掴みにくいかも。脇役ですがポル様が出てます。やっぱり印象に残る(おしり…)。あと監督でもあるレイフ・ファインズがちゃんとロシア人に見えるのがさすが。

エンドロールでヌレエフの踊りが少しだけ見られます。あの焼けつくようなダンス。綺麗に踊れる人はたくさんいるが、それ以上に見る者の胸に熱を灯す人。久しぶりに全部観たくなった。
晴海通り

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