出会いと別れ。人生の岐路。
開明獣さんのレビューで気になって早速。
2018年公開、80年代のサイゴンを舞台に、借金取りと大衆歌劇スターという2人の青年の出会いと別れを描く。構図や光の使いかたが上手く、すっと心に染みるようなシーンが幾つも。
劇団で育った演奏家の息子ユン。ある悲しい過去から借金とりを稼業としていたが、ある日、大衆歌劇場に取り立てに向かうと…。
前半、ベトナム語って真面目なこと言っててもシリアスに聞こえないんだよなぁ…って思ってたら音楽もか?!悲しいシーンでも音楽がポップ。
さらにはエレキギターも含め弦楽器が全て”ビャンビャン”いってるので、もしかして?!と思って調べたらやっぱり scrapped!!。リッチーやイングウェイどころじゃないなw そしてベトナム語の語感ともマッチしまくってる。
参考: 「フレットの間が異様にスキャロップ加工されたベトナムギター」
https://note.com/torigoyasound/n/n5188c9345399
(りょうこさんレビューみて訂正)
あの弦楽器はソン・ランじゃなくてタングエットというらしく(えぇ?!)2弦で琵琶に似た構造。伴奏の音階と、歌の音階がたまにズレて聴こえるけど、ラップみたいな感覚なのだろうか。
さて、実は真面目で優しいユンだが、ある日、借金とりに行った先の家族が心中未遂し、妻子が死んだしまい罪悪感に苛まれる。
酒場での喧嘩、なくした鍵、ゲーム、停電、屋上、タイムトラベル、キーホルダー…縮まる2人の距離と、解脱への希望の芽生え。
稼業から足を洗い、過去のトラウマを払拭し…と、そんな上手く行くわけもなくギリシャ神話的なラストへ。
かつても両親を待ったまま失ったフン。ユンが新しい人生へ踏み出そうとしていた事を知ることをできたのだろうか。
血を洗い流す雨。
幾つも心に残るシーンを与えてくれた作品でした。