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ソン・ランの響きのmidoredのレビュー・感想・評価

ソン・ランの響き(2018年製作の映画)
4.0
借金取立て屋のチンピラとベトナム伝統歌舞劇役者の出会いを伝統音楽と劇にのせて描く切ないラブストーリー。

もう1秒たりとも画面から目が離せない「良さ」でした。音楽がとにかく素晴らしいし、絶妙に東南アジアを感じる伝統歌舞劇も素敵です。街並みもファッションもインテリアもレトロの極みで、人ふくめ全部が絵になってました。

まず、謎の売店で店番をしているお姉さん。すごくダルそうな感じと前髪とイヤリングが堂に入ってます。推し俳優のために縦ロールとドレスできめてくる食堂の女将や、いちいち泣いてる観客のおじさん、爺さん師匠の髭、グァバを持ってくる少女のつぶらな瞳も良かった。ならべたらもうキリがありません。

役者リン・フンを演じる方も、キリリとした雰囲気と感性のみずみずしさを感じさせる表情が本当にそれらしくて素晴らしい。全員、あまり作意を感じないナチュラルさがありました。

そうなるしかないだろうというストーリー展開にも、まんまと胸を掻きむしられました。ごんぎつねも入ってる気がします。ただこれは恋愛なんでしょうか。配信サイトではBLカテゴリーですが、限りなく友情らしいお話でした。

確かに、失恋がどうとか、愛が生まれるなどのセリフや、歌舞劇のすじをみると恋愛とも取れるのですが、特に同性愛を示す演出がなかったのが気になります。

むしろ、孤独だった青年がついに親友と出会い、失った家族とのつながりをも取り戻す物語に見えるし、その方がかえって切ない気もするのです。友情物語にラブソングを使って泣かせる『スタンドバイミー』みたいな。

でも、店番姉さんにヤキモチをやいてたようにも見えるし、彼女には使わせないベッドを使わせたりしているし、なんとなく全体的に女性の描き方に偏りも感ずるし、合奏シーンがなにかのメタファーだとすれば、やはり同性愛……?

愛は愛なので考えるのはやめます。
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