砂

それぞれの道のりの砂のレビュー・感想・評価

それぞれの道のり(2018年製作の映画)
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アジアフォーカス2019にて:

フィリピンの巨匠3名による、旅をテーマにしたオムニバス。

ディアスはモノクロの長回しという静謐な映像ながら、明暗のコントラストが非常に強く舞台の森を人が歩くことによる狂気を際立たせるかのようだ。事実は示唆されるに留まり、ある種のマジックリアリズム的な不思議さと不気味さのある、観念的な映像劇だった。

メンドーサはドキュメンタリー風に、カメラマンである主人公が1700kmをも歩きとおすデモ隊に帯同しながら、次第に彼らと心情を重ねていく。

タヒミックは王道のロードムービー。監督の息子という人が主演で、移住のために北から南へと車とフェリーで旅をする。その中で知人を訪ねたり、出会った人たちとの対話を通じて土着の伝統へと想いを馳せる。
世界各国共通の悩みである、土地への所属感の消失と過去へのノスタルジーはフィリピン映画でも描かれていた。
しかし、ホームビデオ風のカットがときおり挿入されたりと、どこかリラックスした雰囲気が全編に漂っており、前二作とはだいぶ雰囲気が異なる。

初めて観たフィリピン映画だが、さすがに巨匠のオムニバスとあって質が高い。ちょっとブレが激しいので軽く酔ったが、彼らの他の作品も観てみたい。
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