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リスペクトのTOTのレビュー・感想・評価

リスペクト(2017年製作の映画)
3.8
フィリピンで貧困と家庭環境に苦しみながら仲間とラップで遊ぶ少年が、老詩人と出会って知る「詩」という希望の光。
圧巻のラップバトルで始まる物語は、現在の麻薬戦争とマルクス時代の圧政の記憶が重なり、光無き闇に落ちていく。
ヤワな私は今年の東京国際映画祭で一番打撃を受けました……。
主人公のヘンドリックスは次から次へと犯罪に手を染めてしまう。
老詩人が彼に面と向かって、他人の言葉と金を盗む偽物と怒り、それを受けてヘンドリックスも「尊敬されたかった」と自分の負の感情を曝け出す。
辛い映画の中でもエモーショナルで胸を打つシーン。
劇中でもかなり辛いエピソードである国家警察の横暴は本当かな創作かなとググったら類似エピソードがあったので、更に暗澹たる気持ちになりました…。
‪Q&Aでも人物造形について、老詩人はマルコス政権時代の複数の詩人に基づき、ヘンドリックスはラップコミュニティで見聞きして作ったキャラクターと、監督が。
撮影しながらストーリーを変えた部分もあり、マルコスが英雄墓地に埋葬されるニュースも撮影中に報道されたので映画に盛り込んだそう。‬
ヘンドリックス役アブラさんはフィリピンの有名ラッパー。
初演技の今作は、17歳の自分を思い出してラップスキルを落として演じ、キャラクターをストーリーに順応させたそう。
また、ラップ音楽が生まれたのは抑圧への抵抗で、まさに今回映画でやったことと。Q&Aでは実際にラップも披露してくださった。ありがとう!
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