しろくま

伊豆の踊子のしろくまのレビュー・感想・評価

伊豆の踊子(1963年製作の映画)
3.5
2022.10.07/218/GYAO
〝旅芸人の娘が学生さんに惚れたってしょうがないよ〟〝かおるは、まだ子供じゃないか〟〝お前さんにはそう見えるかもしれないけど、あの子はあれで一途な所があるからね〟

一人旅の道中で旅芸人の一座と知り合い、行動を共にするうちに踊子(吉永小百合)に惹かれる学生(高橋英樹)。窓越しに見える御座敷の踊子をずっと目で追っていて何も手につかない様子。踊子も学生の優しさに触れて思いを寄せていく。ピュアな恋の物語だね。

ノーベル文学賞を受賞した川端康成先生の名作〝伊豆の踊子〟の映画化だけど、大学教授(宇野重吉)の回想として物語が始まる原作にはない展開。体格のいい高橋さんと線の細い宇野さんとは結び付かず、あれっていう感じだけど、川端先生が撮影現場を訪れている写真を見ると宇野さんそっくり。踊子とのエピソードは、実話ってことなので、吉永さんの演技を見ながら、踊子との淡い恋を思い出されていたのかもしれない。川端先生と踊子の再会(?)にインスパイアされて、現代パートが付け加えられたのではと勝手に推理しているのだけど…。

吉永さんが演じる純情可憐な踊子の仕草や笑顔がひたすらかわいい。最後の別れのシーンも涙を誘う。そこでエンドクレジットが出るのかと思ったら、まさかの現代パートに戻って…。感動の余韻には、浸らしてくれないのね。恋愛事情を対比させたいのは分かるけど、なぜ現代パートをモノクロにしたのかな。色を対比させることであの頃が輝いて見えるけど、その後の人生が色あせた虚しいものだと言っているよう。原作者の今を否定しているようで嫌だな。この監督さんは、山口百恵さんで同作をリメイクされているけど、そのエンディングも原作にはない過激さ。原作を超えるインパクト。最高の素材を準備して極上の一品に仕上げたのだから、彩りを変えたり味変したりしなくてもいいと思うのだが。
しろくま

しろくま