けまろう

世界の優しき無関心のけまろうのネタバレレビュー・内容・結末

世界の優しき無関心(2018年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

『世界の優しき無関心』鑑賞。父親を失い、街に出稼ぎに来る美女サルタナットとそれを追う幼馴染のクアンドゥクの話。赤いドレスを纏ったサルタナットの美しさとカザフスタンの雄大な夕景が観るものを圧倒する。
カミュの「異邦人」に出てくるフレーズ「世界の優しき無関心」が軸になるストーリー。冒頭の決闘をする男たちとそれを眺める男たちが映画全体のテーマを語る。弱者に世間は無関心という残酷なテーマだ。関心を持たれるのはいつでも利害関係が絡む瞬間のみ。それは例えば道中で寄ったコンビニであったり、寄付を求める男であったり、野菜ビジネスを展開する男であったり、美女と寝たい男であったり、さまざまな形で現れる。一方、利害関係を含まない問題には一切無関心で、それはアモンの無償の優しさであったり、サルタナットに対するクアンドゥクの愛情という形で顕現する。「何が本当に価値があるか」を語るクアンドゥクの純粋な愛が尊い。権力や利益など好きな女の髪の毛一本分にも満たないとクアンドゥクは語る。しかし、サルタナットを得るために、利権にかかる悪事に手を染めるという矛盾も抱えている。
クライマックスでは二人は銃撃され、手をつないだ状態で木陰で絶命する。酷く悲しくも美しいラストシーン。そんな二人の死に対しても誰も関心を持たない結末が衝撃的。
劇中に頻繁に出てくるのが「照らす」というアクションだ。舞台となった部屋に光が頻繁に差し込んだり、サルタナットの顔に光を当てたりと、効果的に光を使う演出が深く印象に残った。
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