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イングマール・ベルイマンを探してのlpのレビュー・感想・評価

3.0
東京国際映画祭にて鑑賞。

ワールドフォーカス部門から『イングマール・ベルイマンを探して』。映画監督イングマール・ベルイマンの軌跡を、『ハンナ・アーレント』『さようなら、ニック』のマルガレーテ・フォン・トロッタ監督が辿るドキュメンタリー。

自身もベルイマンの影響を受けながら、金獅子賞を受賞した『鉛の時代』が黒澤明の『羅生門』などと並び、ベルイマンのベスト映画11本に選出されたマルガレーテ・フォン・トロッタ。ベルイマンが選ぶベスト映画11本の監督で、唯一存命しているのが彼女だけということで、今作の監督はマルガレーテ・フォン・トロッタ以外にいないのだと伝わってくる。(ここら辺の事情は全て、今作の中で触れられています。)

映画はベルイマンの家族や、様々な映画人へのインタビューを通じて、ベルイマンの実像に迫る構成。
リヴ・ウルマン、ミア・ハンセン=ラヴ、リューベン・オストルンド、オリヴィエ・アサイヤスなどなど、次から次へとビックネームが登場する。

インタビューを通じて映画は、ベルイマンの映画監督としての魅力・偉大さを伝えるのはもちろんのこと、家族との関わりや「子供時代」への執着など、一人の人間としての実像に迫っていく。
個人的な白眉は、リューベン・オストルンドへのインタビュー。スウェーデンの映画界を冷静に分析した上で「ベルイマンを正確に考察するには、まだ時間が必要」と語るクレバーさに惹かれる。また、監督が「いつか映画で描きたいシーン」を語っていたり、マルガレーテ・フォン・トロッタへ逆にカメラを向ける瞬間など、短い登場時間ながら、大いにインパクトを残す。

映画史の一端を知るには、最適なドキュメンタリーでした。万人受けは難しいと思いますが、映画祭以外でも観られる機会があることを期待したい。
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