SatoshiFujiwara

イングマール・ベルイマンを探してのSatoshiFujiwaraのレビュー・感想・評価

3.9
TIFF2018

作家とその作品は別物であって、作品を作者個人の内面と結び付けるのではなくそれ自体を自律的に論じるべき、という立場に惹かれるものがあるにせよ、マルガレーテ・フォン・トロッタによるこのベルイマンのドキュメンタリーを観ると、少なくともベルイマン作品はこの監督の「内面」と分かち難く結び付いていることがより明確になる。ナルシスティックで孤独な単独者、女を愛すると同時に女をどこかそのナルシズムを補完するための「パーツ」と感じさせるような指向性。こういう歪んだ内面とその「補償」への欲望がなければベルイマンの諸作品は生まれなかったんじゃないか。そんなことを考えさせた作品。

登場人物のインタビューが実に楽しい。ベルイマンのミューズ、リヴ・ウルマン、いかにもシネフィリーなアサイヤス、ベルイマンが晩年を過ごしたフォール島で実際に作品を撮ったミア・ハンセン=ラヴ、「自分はヴィーデルベリ派と見做されているんでドイツの監督からベルイマンのドキュメンタリーに声が掛かったのは嬉しい」と何となくとぼけた風情で語るオストルンド(スマホをフォン・トロッタに向けて逆インタビューを始める辺りはいかにも『ザ・スクエア』の監督)。息子のダニエル・ベルイマンの「父親が死んでその後寂しいとか思ったことは全くない」と語るが、このシンプルな言葉にイングマールの内面的本質が照射されてはいまいか。貴重なフッテージも多数、一般公開を望む。
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