イタリアのもと首相ベルルスコーニを主人公にした異色作。
ひとを惑わせ扇動させる麻薬のあやうさは、言葉巧みに夢を見せる右翼のポピュリズム政治家に似る。
残念なのは、具体性がむきだしの素材が目立ち、ソレンティーノらしい突き抜けた世界観にかけること。
物質的なものはあたえられても、精神的なものをあたえられなかった男という、いささか陳腐な人物造形になっている。
ただ、そんなベルルスコーニを糾弾しながらも、ラストシーンで彼にむらがって熱狂したイタリア人をも批判している(キリストの磔刑)のは、なんともわかりやすいメタファーではあるが見事。
トニ・セルヴィッロの「芸」には拍手喝采。