湯っ子

LORO 欲望のイタリアの湯っ子のレビュー・感想・評価

LORO 欲望のイタリア(2018年製作の映画)
4.0
ソレンティーノの映画に出てくる建築物やインテリアって、なんであんなに素晴らしいんだろう…私の拙い表現では追いつかないラグジュアリーさ、ゴージャスさ。そして次々に登場する女性たち。みんなミス・ユニバースみたいな、判で押したようなセクシー美女。私は今、何を見せられているの?と思う長い長い乱痴気騒ぎだったけど、このパーティシーンがあるからこそ、この映画の持つ陰影の濃さが際立っていたと思う。
張り付いた笑顔と風が吹いてもそよとも動かなそうな頭髪のトニ・セルヴィッロ。イタリアの元首相ベルルスコーニがモデルらしい。もちろん私は詳しいことは知らないけれど、最初の断り文句から、ほぼフィクションと思ってよさそう。トニ・セルヴィッロは「グレート・ビューティー」でもパリピおじいをやっていたが、この作品での彼はさらに怪物感を増し増し。なんか、皮膚の質感が怖いのよ。ゴムマスクみたいなの。
ギトギトの欲望丸出しの主人公と、なんとかその恩恵に預かろうとする人々がひしめき合う中で、そうじゃない人たちの存在感がとても際立つ。70歳ながら性欲ギンギンの主人公に「おじいちゃんと同じ口のニオイがする。クサくはないけど悲しい気持ちになる」とか言い放つ学生クレア。ギトギトおじいが「あの娘のじいちゃんもポリデント使ってんのか…」みたいに落ち込んでる姿はちょっとかわいかった。あとは金とオンナをちらつかせた誘いに乗らないサッカー選手とか、弾丸セールストークを袖にするおばちゃんとか。終盤、冷め切った妻との口喧嘩では、辛辣ではあるけど、下品に貶めるような言葉はなく、意外にも哀しくロマンチックな着地だったりして、なんだか憎めないキャラクターになっていた。
だけど、これだけ滑稽で欲深で軽薄なはりぼてモンスターを散々見せられた挙句のあのラストね…、なんて映画撮るんだろと思わされてしまう。そしてあまりにもタイムリーに心に迫るものがあり、呆然としてしまった。
湯っ子

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