かるまるこ

In the Life of Music 音 楽とともに生きてのかるまるこのレビュー・感想・評価

3.7
未だ消息不明(多分殺されてる)のカンボジアの国民的歌手シン・シサモットの代表曲『バッタンバンの花』
(Champa Battambang)
がクメール・ルージュの時代とその前後で3回その意味合いを違えて歌われる。

ストーリーが面白いわけでも映像が凄いわけでも俳優の演技が上手いわけでもない至って地味な作品だが、ポル・ポト政権下のジェノサイドを題材とし、革命歌以外を禁じられる中、犠牲となった(とされる)シサモットの曲が歌われ、3つの時代をつなぐ主人公の名がホープ(希望)であり、そしてなにより子役達の笑顔を印象的に捉えたその映像。
それだけで十分だ。
小手先の技術などこの映画に必要ない。
シンプルで力強い作り手の願いに心打たれた。

原子共産制を試みた例は過去に何度かあるが、一度進んだ時計を元に戻すことは出来ない。狩猟時代に帰ろうなどもっての外なのだ。なにより人間がそれに耐えられない。人類の歩んだ歴史がどんなに間違っていたとしても消し去ることは出来ない。それは未来の否定に他ならない。希望なくして人間は生きられない。

現状に不満があると私達はすぐ「昔の方が良かった…」などと思いがちだが、現状に不満があるなら、前を向いて明日をより良くすることを考えるべきなのだ。

シネコンでカンボジア映画が観れるなんて多分なかなかないと思うので是非!
(シサモットの『バッタンバンの花』と民主カンプチア時代ついては劇中特に説明はなく、知ってる前提で話が進むので予習は必須かもしれません)
かるまるこ

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