ノラネコの呑んで観るシネマ

輝ける日々に(『サニー』ベトナム版)のノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

4.4
TIFF。「サニー 永遠の仲間たち」のベトナム版リメイク。
日本版同様にプロットはオリジナルに忠実で、テーマ的にも差異は無し。
面白いのは、やはり時代と社会設定のローカライズだ。
韓国版は2011年から民主化前夜の80年代を、日本版が2018年から平成不況の90年代を描いた。
それぞれが社会の転換期だった訳だが、ベトナム版の現在は2000年、過去は1975年で、舞台は南ベトナムの都市ダラット。
2000年はビル・クリントンが米国大統領として戦後初のベトナム訪問をした米越和解の年で、1975年は言うまでもなくベトナム戦争が終結した年。
少女たちの青春の終わりが、そのまま南ベトナムという国の終わりに重なる構図。
韓国、日本版と同じく二つの時代の間は描かれないのだけど、国が滅びたのだからその後の彼女らが体験した変化が最も大きいのは本作だろう。
例えばキム・ソンギョンとともさかりえが演じたキャラクターの実家は、本作だと映画スタジオ経営者のブルジョワで、赤化統一後に辿った人生は相当に困難だったのは想像に難くない。
同じCJエンターテイメント製作で、日本とベトナムでリメイクされた「怪しい彼女」も時代性のローカライズが絶妙だったが、これも意味あるリメイクになってる。
やっぱり「歴史のある時点」をモチーフにした映画は、お国事情が出て面白い。
そこに永遠の友情という普遍性がある訳だからね。
監督と主演女優さんも実は幼馴染で、この映画はリアル同窓会だったそう。
雨に唄えばへのオマージュなど、遊び心も楽しい。
2000年を現在にした理由を、監督は「この頃ベトナム人はようやく将来の夢を持てるようになった」と言ってたのが印象的。
この五年前の米国との国交正常化と経済制裁解除で国が豊かになり、実際映画でも結構良い暮らししてる様に見える。
しかしそれでも、日本では「ザ・庶民のクルマ」のカローラが、まさかのショーファードリブンで使われてて、ステータスシンボルなのにはビックリ。
まあ18年経った今はもう変わってるんだろうけど。
こんな異文化ギャップも、外国映画の面白さ。