ゆーき

プロメアのゆーきのネタバレレビュー・内容・結末

プロメア(2019年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

名作だと思います!

プロメアという題名から、ギリシャ神話のプロメテウスが元であることが当然考えられます。プロメテウスは油で包んだ骨と皮で包んだ肉のどちらかをゼウスに選ばせ、見た目に騙された神様は油と骨を選んでしまい、人間は肉を食べるようになったという話もあります。ゼウスは怒って人間から火を取り上げ、肉を調理できないようにしましたが、プロメテウスは天界から火を盗んで、人間に与えました。人間は火を使えるようになりましたが、同時に武器、戦争をも生み、その火は「冷たい火」と言われます。さらに怒ってしまったゼウスは人間に災いをもたらすため、プロメテウスの弟、エピメテウスに最初の女、パンドラを送りました。プロメテウスに比べてエピメテウスは考えが浅い男であったため(プロメテウスは「先に考える男」、エピメテウスは「後で考える男」という意味があります。プロローグ、エピローグという言葉がありますが、プロには先、エピには後という意味があります。)彼女と結婚してしまいます。パンドラは人間界に来る際に決して開けてはいけない箱を貰います。これは元々はピトスという壺のようなものでしたが昔の人はこれに穀物などを入れていました。つまりいいものを入れていたわけです。だからパンドラは勝手に中身がいいものと決めつけて蓋を開けてしまいました。パンドラの箱という言葉の通り、中からはさまざまな災いが出てきました。そして人間はさまざまな災厄に悩まされるようになりました。
以上のことからプロメテウスのエピソードには、油で包まれた骨と皮に包まれた肉、火なのに「冷たい」火、いいものが入っているはずの壺に災いといった、外の内側があべこべであるというモチーフが繰り返し用いられているのです。
この映画においても、火消しのガロが血の熱い性格、バーニッシュのリオがクール、一見クールなクレイは、四角いフォルムに三角の影が入ったキャラクターデザインに表れているように、内側に熱い野心を秘めていて、外と内があべこべになっているのです。また、火器である銃から氷が出てくる、炎でできた蛇が涙を流すといった演出にも同じことが言えるでしょう。
また(これは「ロジャーラビット」(ロバート・ゼメキス/1988)にも言えることですが)、バーニッシュであるクレイがバーニッシュ達をカウカーソスの山頂に貼り付けにされたプロメテウスのごとく拘束し、エンジンの燃料とするという逆説、そして同時に非バーニッシュであるガロがバーニッシュである仲間を守るためにバーニッシュと戦うという逆説にもなっています。
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