ちょげみ

プロメアのちょげみのレビュー・感想・評価

プロメア(2019年製作の映画)
3.6
あらすじ
人体が発火し周りを火の海に沈めるという現象が世界で同時多発的に起こり、世界が半分焼失した出来事から30年後経過した現在。
突然変異で炎を操れるようになった人種は<バーニッシュ>と呼ばれ、彼らは度々放火事件を起こすことから危険分子として扱われていた。
高機動救命消防隊<バーニングレスキュー>に所属するガロは、バーニッシュが起こした火事を消化している最中に、バーニッシュの中でも攻撃的な面々で構成された<マッド・バーニッシュ>のリーダー、リトらと交戦し、無事拘束することに成功する。
危険分子であるマッドバーニッシュを排斥し、世界の安寧にまた一歩近づいたと確信するガロだったが、バーニッシュに触れ彼らの事情を聞くうちに、バーニッシュにも並々ならぬ事情があると知る。
そして幼い頃に自分を救ってくれた恩師、自治共和国プロメポリスの司令官クレイ・フォーサイトがある計画を進行中である事を知ったガロは、ある迷いに囚われる。
 

"熱血主人公ガロとクールなリロが協力して織りなす、世界の命運を賭けたロボット大戦"

主人公が熱血という事もあり、常にハイテンションな空気を基調として物語を進行させていくのですが、最後の方はずっとハイテンションだったのでちょっと集中力が持たなかったかな。。。

しかし戦闘シーンの作画はものすごいです。
パステル調の緻密な作画が今作品の大きな特徴の一つですが、この作画で繰り広げられる戦闘シーンはなかなか他の作品では見られない。
特に、依頼を受けてバーニングレスキューが出動、市街地を車で走りながらの自己紹介、消化活動、そしてマッドバーニング達との交戦という序盤の一連の流れは、思わず身を乗り出したくなくなるくらい心を惹かれるシークエンスでした。
歴史に残る傑作を見ているのかもしれない...!と一瞬思わせるほどこのシーンは魅力的で、ここだけでも繰り返し見たくなります。
しかし、(個人的に)序盤にハイライトがあるという事が、この後の展開(戦闘シーン)に対して膨らみすぎた期待感を結果的に萎えさせる結果となってしまったかな。。。


この映画のターゲット層というのは、今石監督の作品のファンの方々、ジャンルとしては「ロボット映画」、またはそれに類するフェチを有している方々だと思うけれど、自分はそことのマッチングが悪かった。
後半に行くにつれてロボットファンの方々の琴線に触れるようなシークエンスや要素が数多く登場するけども、ロボットに特に思い入れがない自分としては今一つ乗り切れなかったです。。。


今作品において悪役が言い張る論理として、1万人(くらい)の市民を守るために、数百人のバーニッシュを犠牲にしても良い(バーニッシュは苦痛のあまり死ぬ事になっても)というものがある。
これは物語の登場人物が直面する道徳的なジレンマの伝統的な系譜を使われている。
多くの登場人物達は、帰結主義者の道徳的論法(結果によって判断する)or定言的道徳原理(行為の帰結ではなく行為の性質で判断する)という二つの極で揺れる事になる。
そして選択の理由や事情を通して、キャラクターの持つ思想を反映させると思うけれど、今作品は勧善懲悪に徹していて、そこがちょっと残念に思いました。
悪役の論理は筋が通っているように思うけど、悪役は完全な悪役として描かれているため、彼のいう事は無条件に間違っていると感じてしまう。
彼らの葛藤や選択に重みを持たせる意味において、ギリギリの状況の中から生まれる人物達の魂の叫びをもっと描いていれば、この作品はより重奏性を持ったんじゃないかなぁと思います。
でもよく考えてみると作品のテイスト的に今作のような描き方が正解だったのかな。
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