蛇々舞

プロメアの蛇々舞のレビュー・感想・評価

プロメア(2019年製作の映画)
4.5
エンドゲーム以来、面白すぎて疲れた。

鑑賞中、ずっと全身に力を込めている自分に気づく。

エンドロールが終わって初めて「はあぁ~……っ」と溜め息と共に座席に沈み込むような、そんな映画。

とにかく最初から最後までクライマックス。
蛍光色の画面を、ところ狭しと暴れまわるキャラクターたち、そしてロボット、彼らの舞い踊る息つく間もないノンストップアクション!
大画面映えを意識した構図と長回しカットの連続で、まさに呑み込まれそうなほど圧倒された!

そして叫ぶわ叫ぶわ、キャスト陣の全開の熱演!
前のめりにキャラを“生きる”松山ケンイチ、早乙女太一の両名。
その熱量に埋もれまいと奮戦しつつ、技巧で劣る彼らをフォローするかのように台詞全体にメリハリを作り出す本職声優陣。
そして納得の風格を備え、立ちふさがる堺雅人!
こんな聴きごたえ抜群のアニメ映画も久しぶりだ!

まさに中島かずき節という感じで、教科書のセオリーなんてなんのその、ロケットブースターが爆発したかのごとく、大胆に展開するプロットは流石。
並みの脚本家なら「雑」「掘り下げ不足」「時間の経過が判りづらい」と不満点に繋がるだろう。
けれども稀代のストーリーテラーは、それを逆手に取っているのだ。

登場キャラクターは全員が、命懸けで生 きている。
まさに劇中の「燃やし尽くす」を体現するがごとく、自分の信念、哲学に忠実に、全力で突き進むのだ。
だからこそ、お互いの魂の奥底に、相通じ合うものを見る。
それゆえ、あんなにも短時間で、あんなにも深く解り合える。

カッ飛んだ展開、時間の飛躍を、むしろ推進力に変え、物語の強度を増している。
少しのボタンの掛け違いで全て破綻するような、こんな危うい構造の映画だけれど、全てが噛み合って凄まじい熱量の作品になっているのだ。

そのくせ、ただ賑やかで楽しいだけのエンターテイメントにはなっていない。

差別と被差別。
“自分は正義だ”と暴走する人々(彼の鎧が脱げて、ちっぽけな体が露になるさまは、“正義”というハリボテを掲げる人らのメタファーだろう)
弱い誰かを切り捨て利用し、強い人々だけに目を向けようとする愚行も描かれる。

いやホントに天才か。
もっと早くに観に行かなかったのが悔やまれる。
何度でも観たい傑作だ。

最後に、主人公が少年漫画的に、どこまでも真っ直ぐで目の前の不義を見逃さないのが気持ちよかった。
現実では対案の無い反論は無責任だし、それは、いくら道義的に正しい主張でも益になることは少ない。
けれど理想が必ず報われ、大団円に導かれるのがフィクションの良さだし、それを愚直なまでに体現するのは、やっぱり素晴らしいことなのだ。
だったら、存分に理想論を掲げたって良い。

「これが映画なんだ!」

そう喝采したくなる一作だった。
蛇々舞

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