ちろる

君は月夜に光り輝くのちろるのレビュー・感想・評価

君は月夜に光り輝く(2019年製作の映画)
3.4
高校生の渡良瀬まみずは、死が近づくほど肌が強く光る“発光病”を患っていた。
発光病の患者が成人まで生存した例はなく、彼女は病院から出られない。まみずの同級生の岡田卓也(北村匠海)はとある事情で自殺を考えていたが彼女の願いを実行し、その“代行体験”を通じてまみずは人生を楽しむようになり、二人は心を通わせるようになる。

ストーリー自体は既視感のあるもので、目新しくはない。
演出は「どうぞ、ここで泣いてください。」とキャプションこそ付いていないものの分かりやすく泣かせたいところで泣かせようとしているので少し冷めてしまった。
このストーリーの問題点はまみずの病気を架空のものにしたという点。
死が近づくにつれて発光するって、そのファンタジックさなんだ?
しかも美しい少女がそれを患っていて、夜にまるで妖精化の如く美しく光るって、ただそういう映像が撮りたかっただけでは?とうたぐりたくなる。
難病ものってただでさえ難しく、なのにこの手の難病もののラブストーリーって、難病を患う少女がなぜか最後まで歩けたり、(キミスイみたいに)脂汗かいて苦しんでるシーンなんかほとんど描かないでいることにいつも疑問を持ってしまうから、今回みたいなアリもしない病名で美しくごまかそうっていうのがちょっと頂けない。

キミスイが結構ヒットしたからね、同じ匠海くん使って、女の子をまたおじさんたちに大人気の永野芽郁ちゃん使って当てちゃいましょー!っていう大人たちの小手先の魂胆が丸見えで嫌でした。

もちろん、北村匠海&永野芽郁さんに罪はなく、求められたように美しいラブストーリーを作り上げてくれたのは間違い無いのですが、これを「難病もの」のカテゴリーで観ようと思ったら火傷します。

生きる意味を失った青年が、不治の病の少女と出会い心を通わせることで、彼女を心の中で生かし、自らも懸命に生きようと心に決める。
このテーマ自体は決して悪くない。
やり方次第ではいい映画になっただろうに、卓也が『生きること』についてどう向き合ってきたのかが詳しく描かれないので、まみずが言う「あなたは生きて」が宙ぶらりんになってしまっている。
せっかく生と死を見つめることのできるテーマなのにもったいない。
いいテーマなのに、いい加減使い古された深夜に病棟から抜け出すとかいう、演出やめないかな?
これいつだっていい事ないし、そもそも社会倫理的ににお勧めしないし、これをドラマティックだと思ってる作家さんや監督、古い。

大人に響くタイプの青春ラブストーリーと、響かないタイプのラブストーリーがあるけど、これは残念ながら前者でした。
原作読んでないけど多分これなら読まないかな。
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