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運び屋のandesのレビュー・感想・評価

運び屋(2018年製作の映画)
3.7
ずっと「遺作」を取り続ける男、イーストウッドの2018年作。どうやら実話ベースらしくビックリ。全体的なトーンはいつものイーストウッドで「軽くない佳作」といったところ。
主人公アールが基本的にクズよりで、なまじ戦争に行って年取っているだけに、ちょっとやそっとでは動じないのが良い。死を覚悟しているので、麻薬カルテルとのやり取りにも納得させるイーストウッド力。
まぁ、ファミリー映画なんですが、「因果報応」「対価」というものが突きつけられるシビアさは評価できる。家族を蔑ろにしたことで老後は困り、家族を取り戻せたが牢屋に入るのだ。「そんな人生だから、年取って運び屋してる」という台詞はなかなか手厳しい。すべてはブーメランなのである。
軽妙な雰囲気でロードムービー的な趣きもあり、アールが持ち前の「老いを活かした機転」で、トラブルを回避するのは作劇上のフックとなっている。憎めないキャラが敵も味方も多く、チンピラから捜査官まで、不快になる役はいない。
「人生におけるブーメラン性」が重めなので、敢えてマフィア関係はヌルめに撮ったんだろうけど、ちょっと無能に見えるので、ややマイナス。葬式と捜査のカットバックは間抜けに見える。
基本的に人生をミスってるアールが、自身の行いを見つめ、受け入れたラスト。時間も妻も取り戻せないが、ケジメをつけたのだ。デイリリーの花言葉はいくつかあり、どれも映画の主題とマッチするが、「苦しみからの解放」というのは、ラストカットのアールの表情で見て取れる。
「映画で贖罪を続ける」ことが許されるイーストウッドは、やはり稀有な監督だろう。ルックとして自身の老いをここまで把握しているのは脅威である。
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