アキ

運び屋のアキのレビュー・感想・評価

運び屋(2018年製作の映画)
5.0
面白いとか上手いとかは完全に超越してるよね。もはや何と形容しても言葉が貧しくなりそうで怖いくらいなんだが、唯一はっきりしてるんは今般もクリントイーストウッドの奏でる心地の良い音楽にうっとりしっぱなしの2時間だったってこと。この心地よさは言ってみれば、アルコール度数3パーのビールがジワリと骨に染みてくような細胞レベルの心地よさである。

思えばクリント演じるアール・ストーン一つとってみてもいかほどに魅力的な魔法が各所に仕掛けられてることか。花を愛し、ネットを嫌い、荒野で立ち往生してる若いドライバーのパンクを巧みな手さばきで修理する年の功を見せたかと思えば、立ち話の最中にも乾いた唇へリップを塗る茶目っ気も忘れない。そうした話の端々に奏でられた癖(音)の数々がやがてはアールに豊かな生命を注ぎ込み、その輪郭をあでやかに際立たせる。妻の○やラストのアールの決断にどうしようもなくハートが揺さぶられるのもまさにアール・ストーンという男がスクリーンを介した単なる役柄ではなく、体温の通った人間そのものに昇華しえたからに他ならないだろう。ダイナーでアールと○とが会話するシーンなんでもういろんなモノが滴ってるので是非その目に焼き付けて感嘆してもらいたい。

ところで少しだけ似た筋をたどるグリーンブックを中途で引き寄せて比べてたりもしたのだけど、もはや実力の差は歴然だなと。モノが違うし、次元も違う。
こういうのを”類まれな才覚の越えられない壁”というのだなと改めて思ってしまった。
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