けーすけ

薬の神じゃない!のけーすけのレビュー・感想・評価

薬の神じゃない!(2018年製作の映画)
3.9
タイトルや映画ポスターからコメディ的な犯罪ものと思ってたのですが、ちょっと毛色が違ってました。
実在の事件をモデルにしたとの事ですが、実際の事件は2014年頃の話。本作では2002年の設定に置き換え、人物等の描写もかなりエンタメ寄りにアレンジされているようです。

主人公のチョン・ヨンはうだつのあがらないダメおっさん。営む店の家賃すら払えず、別れた妻からは息子の親権も取られそう。さらには病気の父親の手術費も払えずに病院を追い出される始末。そんな折に、リュ・ショウイーという骨髄性白血病患者から「スイス製の高額な薬は買えないので、インドのジェネリック薬を密輸してほしい」と頼まれる。

チョンも当初は渋ったものの背に腹は変えられず、密輸して販路を作るため、英語のできる牧師や、骨髄性白血病の息子を持つ踊り子の美女、街の不良少年を次々と仲間にし売上を伸ばしていく、、、という感じで前半はケイパームービーのごとく、密輸犯罪集団が暗躍していくさまを面白く描いておりました。



彼らが売りさばく薬は中国で認可されていないものなので、当然ながら密輸も販売も重大犯罪。しかし正規に輸入されている薬は1箱3-4万元。日本円にしたら50-60万円くらいでしょうか。当然貧困層には買える代物ではない。
それのジェネリック薬を5,000元で販売し、求める人は続々と…。劇中では「ニセ薬」と呼ばれてもいましたが、薬効は確かなようで必要とする人たちからするとチョンらはまさに神のような存在。


売れ行きも上々で、チョン達は大金を手にする。ところが“正真正銘のニセ薬”(なんだこの日本語w)を販売する集団が現れたり、警察の捜査の手も徐々に迫ってきたため、チョンはある日スッパリと密輸販売を止める事にしたのだった。
このあたりまでが前半のおよその流れで、彼らが薬の販売で仲を深め大金を手に入れていく流れがテンポよく引き込まれました。




そして後半から雰囲気が一変します。チョン・ヨンはちょっと長めの髪でボッサボサだったのですが、短髪イケメンに大変身。びっくらこいた!笑

髪型もともかくとして、一度足をあらったチョンがあるきっかけで再び薬に関わる、というベタな展開ではあるのですが、そこからの流れが凄かった。ネタバレになるので詳細は控えますが、「そうくるか!」「そうきたか!」「そうなるのかー!!」の連続。

違法でハイリスクでもあるとわかっていても薬を密輸で販売するチョンの義勇、そして正義であるべき人物の葛藤といったものが詰め込まれており心震わせる物語となっておりました。

劇中「この世の病はただ一つ、、、それは貧乏だ」というセリフがあったのですが、貧しい者も平等に医療を受けられる世の中になってほしいものだと思わされた次第。
このあたりは新型コロナのワクチン供給にも通じる部分がありますね。



中国映画はあまり見る事がないので、それほど期待していなかったという点はあるのですが、想像以上に良かったです。おすすめできる一作だと思います。



2021/04/19(月) TSUTAYA DISCAS定額レンタルにて鑑賞。
[2021-037]
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