桃色

薬の神じゃない!の桃色のレビュー・感想・評価

薬の神じゃない!(2018年製作の映画)
4.0
「ロケちゃんと気になる話題作デート」

最近タイムラインを賑わす中国映画。
どうやら実話を元にと言われているけど、主人公の設定は映画のために再構成されてエンターテイメントな仕上がりだったね。

中国の上海にいる白血病患者を生いかす為にインド産のジェネリック薬品を密輸する話。
主人公は上海に店を構え怪しい精力剤を売る男のヨン。
妻に逃げられ一人息子の親権を争うにも経済力もなし、店も危うく追い出されそうな時に慢性骨髄性白血病を患うリュ・ショウイーがインド製を輸入して欲しいと話を持ちかけてくる。
スイスの製薬会社の輸入された薬は一瓶3万7000元(約 703,000円)それと変わらない効力のインド製を1瓶4000元(約 76,000円)で売ろうという計画。
そもそも地元のインドでは一般価格が2000元、原価だと500元。
中国での代理店になれば500元で仕入れられる。これがが価格の基本。
もちろん儲ける為に始まった商売。
クチコミで広まり仲間も増えていったね。

↓以下ネタバレ気味です







悲しくも散ることになった2つの命
最初に緒をくれた白血病を患うリュ・ショウイー。
この家庭に招かれて夫婦の希望を聞くうちにヨンはきっと彼らの未来を一緒にみたんだろうね。
孫まで抱けるかもしれない希望を我々も望んでいたけど。

もう一人赤い髪の20歳の青年
かれも白血病を患い、父母に薬の心配をさせたくないために故郷を捨てて上海にたどり着いた一人。
いつ死んでもいいって退廃の人生を送ってた。
いつの間にかヨンの相棒になって弟のように可愛がられる無口な青年。
病状が好転して故郷に帰る夢も見ながらだったね。

後半、私財を崩してヨンは中国全土の人たちに原価の500元で薬を売ってゆく。
この時のヨンにあるのは「罪滅ぼし」という過去の自分が逃げたことへの贖罪。
最後の最後まで命のために罪を犯して行くことになる。
そして捕まることを想定して、息子を別れた妻の元に送る空港のシーン。
息子が父を大好きだってよくわかるシーンだったね。
だってすごくカッコイイもの。
「自分は悪い奴じゃないと息子に伝えて」
子供と向き合うより背中を見せながら前に進むことが大事なんだっていっていたような。

取り締まる警察の所長もこの不条理にはちゃんと気がついてる。
追い詰める刑事の義理関係の弟も同じ。
ここのあたりは国家ぐるみ、警察ぐるみの悪い人ウヨウヨの韓国映画とはちょっと異なり「罪」と「命」の天秤は間違いなく振れていたね。
「偽薬」と呼ぶスイス製薬会社の中国人社長。ジェネリックは偽薬じゃないのに…こういう言葉を使って貶める酷いやつ。

フィナーレのあの移動車の中から見える光景。これが1番の泣きのポイント。
見送る患者たちの顔、顔、顔。
見事に胸を張れる「悪事」への賞賛のようだった。
(まるで宝塚劇場通用口の出待ちの人のように整列して静かなお見送り)
犯罪の話だけど後味爽やか。亡くなるメンバーもいたけどこのラストにこの国の良識が滲んでくるようでなんだか嬉しかったな。

この映画の公開後、実際に中国では李克強首相が輸入抗がん剤の関税を撤廃すると発表。まさに映画の力だね。

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上海は戦時中、いろいろな国の租界のできた貿易の港町。新も旧も混在している大好きな都市です。
共産国家のイメージがあるために観光で上海に行く人はほとんどいないでしょうかね。
実は縁があって5年くらい日本と行ったり来たりした思い出の街でもあります。
最後、ヨンを見送るのはプラタナスの並木道。ハイウェイはブルーのライトで装飾され幻想的な夜景も拝めます。
ご興味のあるかたは(いないと思うけど…)本木雅弘さんの主演した「夜の上海」でどうぞ。
あ!それよりこっちのほうが断然面白いですけど!

--付録

すずかけの まぼろし笑顔 いのちの瓶
(字余り!お粗末!)
桃色

桃色