1980年にTVBで放送された、周潤發主演のテレビドラマ『上海灘』(全25話, 約19時間)の前半部を、劇場用に編集したダイジェストである。
その後の黒社会系列の映画(香港ノワール)よりメロドラマの傾向が強く、又、五四運動や日系スパイの暗躍等、政治情勢をからめている部分に他にはない特色がある。『英雄本色』のような、情念と火薬を前面に押し出したものではなく、組織間の駆引きや謀略に重きが置かれている。
潤發の優美な身のこなしに、メロドラマほど似合うものは他にない。中折れ帽の縁に触れるときの彼の指の動きはうつくしく、詩的な、崇高なものさえ感じられる。それは結末のドックの取引の場面、歐陽珮珊の軍装と周潤發の洋装との対比の演出に、古典劇のような様式美の下に結実している。
尚、後半部分は『上海灘續集』の題で纏められ上映されたが、日本ではソフト化されていない。