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スパイネーション/自白の小のレビュー・感想・評価

スパイネーション/自白(2016年製作の映画)
3.8
『共犯者たち』と同じく、チェ・スンホ監督と非営利独立メディア「ニュース打破」取材班による韓国の北朝鮮スパイ捏造事件の真相を暴いたドキュメンタリー。

ソウル市の公務員が北朝鮮のスパイとして逮捕されたが、国家情報院が提示した証拠は、彼の妹の自白証言のみ。取材を進めていくと、国家情報院の協力者が証拠書類の捏造を暴露し、自殺を図るというフィクションのような事実。そして、スパイ捏造は40年間も続くという…。

観ていて思い出したのが、『THE NET 網に囚われた男』という映画。北朝鮮の漁師の船のスクリューに網が絡まり韓国へ流されていく。彼にはスパイの疑いがかけられ、過酷な取り調べが続く…。

韓国は何故、スパイをつくり上げなければならないのか。民主化以前の韓国は、独裁体制を維持するため「北朝鮮スパイ」を捏造し、北朝鮮の脅威をあおったらしい。

捏造が横行したのは国家情報院の組織延命に加え、政権は民主化された後も支持基盤を維持する狙いがあったのかもしれない。『共犯者たち』で明かされた、政権にとって都合の悪い報道に対する露骨な弾圧を知ると、そうである可能性は高そうに思う。

『共犯者たち』もそうだけど、本作を観て思ったのはエンドロールで流れる協力者の多さ。もはや真実を知るためには、心あると思えるジャーナリストに市民が直接資金を提供するしかないのかもしれない。

しかし一方で、ネットが普及する以前は情報は権力に統制されやすかっただろうから、現代は、自分が想像もつかないような民主主義のあり方があり得るのかもしれない、と少しだけ希望を抱いた。

●物語:4.0
・ファクツ、取材は凄い。

●他 :3.5
・集中力の持続がやや難しかった。
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