Benito

愛欲のプロヴァンスのBenitoのレビュー・感想・評価

愛欲のプロヴァンス(2017年製作の映画)
3.9
【 プロヴァンス、恋人の面影 】

原題:Provenance
"芸術作品などの起源、出目"

イギリス映画だけど、舞台はフランスのプロヴァンス(Provence)。タイトル(Provenance)との微妙な綴りと意味の違いの言葉遊びが面白い。それだけに、邦題の付け方はミスリーディングどころか残念すぎる…

映画自体は、時間軸が交錯し台詞も多く、登場人物の関係性もぼやっとさせていて、ミステリータッチな気配がある複雑な展開。著名なクラシックピアニストである中年主人公が思い出の地プロヴァンスに買った別荘で倦怠期のヴァイオリニストの妻から離れ、遠い過去の恋の思い出に耽るお話だけど、そこに最近できた若い恋人を呼びたした事でドラマは大きく動くことに…

舞台となったフランス プロヴァンス地方の小さな街アントルカストー(Entrecasteaux)やその近郊の風景が美しい。世界遺産のような華やかさでなく、素朴で静かで踏み荒らされていない感じ。その風景を時折インサートする編集も心地がよかった。

そして劇中で演奏されたり、流れるクラシックがそれぞれも逸品揃い。
 フォーレ:ピアノ三重奏曲 作品120
 ドビュッシー:美しき夕暮れ(Beau soir)
 フランク:ヴァイオリンソナタ イ長調
 ブラームス:ピアノ協奏曲第2番
 ラフマニノフ:ヴォカリーズ
 アルベニス:組曲「アルハンブラ」より ベガ
 ブルメンフェーリド:ポーランド組曲より子守唄
 モーツァルト:ディヴェルティメントK.138
加えて、印象的な主題歌"Come back and love me tomorrow"が劇中とエンディングに流れていた。

ヒロインとなる若い恋人ソフィアを演じたシャルロット・ヴェガはスペイン女優、ファムファタールと思いきや全く想定外の展開で見せたエンディングの表情が見事。共演のピアニストを演じたジョン・リスゴー似のクリスチャン・マッケイが地味だけに彼女は目立っていた。

原題:Provenance
"芸術作品などの起源、出目" という意味だけど、映画ではソフィアの存在自体を言いたいのかとも思う。"あなたは、どこからきたの?" まさに作品のオチとなる要素かと。
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