明石です

クワイエット・プレイス 破られた沈黙の明石ですのレビュー・感想・評価

4.0
「〇〇したら死ぬ」系のよくある設定ホラーに、新機軸のモンスター要素が加わった3年越しの続編。個人的には、こういう「〇〇すると△△」系の、等式の片方に何らかの要素を入れたらもう片側から半自動的に答えが出てくるみたいな設定ありきの映画は思考停止だと思っていて、その「設定」を最初に発明した作品以外は広い意味でのパクリ、良く言えば、アイデアの枯渇を積極的に受け入れた商業映画だと思っている。

「音を出したら死ぬ」というカゲキな設定に前作はぐーぐー寝てしまっての以来の鑑賞。今作は、、世界観は素敵でした。荒廃した世紀末的風景と、後に残された自然が調和してる廃墟のような世界観、どことなくラストオブアスみたいで良い(というかほぼラスアスじゃん!というのは多分禁句。髭面のキリアン·マーフィも若干ジョエルに似てるし笑)。それから、音と台詞がほぼないという映画としての致命的な弱点(なにしろ寝てしまう)を補うためか、カメラワークに過剰といって差し支えないほどの工夫が凝らされていて、視覚面で見ていて飽きないところが沢山ある。絵のように美しいカットもちらほら。設定は安易なのに、中身は意外にもちゃんと作ってるある不思議な作品笑。

しかし若いなあエミリーブラント、、『プラダを着た悪魔』から15年も経ってるのにこのピッチピチさは凄い(プラダを着た悪魔ってそんな昔の作品じゃないけど、なんとなく『ゴッドファーザー』や『アメリカン·グラフィティ』みたいな歴史的な映画って感じがするので余計にかも笑)。この人の尊いお顔がアップで映るたびにドキドキしました。まだまだ単独でヒロインいけそう。良質なワインのように素敵な年の重ね方をされているようで、今作でファンになった。好き。

ただ「音を立てたら超即死」とジャケットでデカデカと謳っておきながら、主人公サイドだけ全然「超即死」じゃないのは映画的に都合が良すぎる気がする、、けどそれは、設定がわかりやすいからという、おそらくはその程度の理由から、何となくわかりやすい広告をつけてしまった配給側の責任と思う笑。もちろん作り手にも問題はある。何事によらず安易さは伝播してしまうから。「あ〜またこのタイプね」というのは、少なくとも映画=芸術という観点に立って言うなら、最も抱かれてはいけない種類の印象だと思う。

でもやっぱり主人公サイドの非人間的な延命力には作り手のご都合主義を感じずにはいられず、結果、だんだんと緊張感が薄れてしまうので、適当な頃合いで何人か殺しておいた方が良いよなあとは思う笑。前回出てなかったキリアン·マーフィなんて殺すのにもってこいだと思うのだけど、多分、3作目の興収を俳優の知名度に頼ってるとしたら、殺せないよね。とかく、芸術的な観点を放っぽったとしても、どうせ死なないんでしょう?と観客に油断されるのは、ホラー映画的にはけっこうな致命傷だと思うのは私だけではないはず。

総合的な感想としては、世界観やカメラワーク、音楽等は素晴らしく、むしろこれだけきちんと作る力があるのなら、設定という映画の根幹の部分を安易さに任せず、そこも含めて作り込んだ方が良いのでは、と思っちゃった。世にゴマンとある設定系ホラーに頼っている以上、「音を立てたら超即死」とかジャケットに書かれるのも無理はなさそう笑。作品の世界観は大好きなので、この監督の次作にはとてもとても期待です。
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