よーだ育休中

クワイエット・プレイス 破られた沈黙のよーだ育休中のレビュー・感想・評価

3.5
鋭敏な聴覚と強靭な外皮を有する盲目の異星人に侵略された地球。補聴器のハウリングが弱点だと見破り化物を倒すことに成功したAbbott一家だったが、先の戦闘で父親と家を失ってしまう。母親と三人の子供たちは、危険に満ちた外の世界へと足を踏み出す。


◆音を立てたら、超即死。

鋭い聴覚を持つ盲目のエイリアンに支配された人間たち。僅かでも物音を立てようものなら、すぐさま化物か跳んできて惨殺されてしまう恐ろしい世界。

《音響》を敢えて排除してしまう事で、物語への没入感を高めて恐怖を煽る新しいスリラー作品の続編が制作されました。舞台となるのは前作の直後。前作で斃した化物の亡骸や、地下室へ続く階段の釘など、印象的なシーンを思い起こさせるカットが差し込まれています。

今作でも何体かエイリアンの撃退に成功するものの、やはり彼らの圧倒的なフィジカルと絶対的な死への恐怖を目の当たりにすると、女子供だけではそう易々と撃退することも難しい様でした。

今作では、冒頭でエイリアンが地球に飛来した日のAbbott一家の様子が描かれています。前作で物資を調達していた街へ長男の野球の試合の応援に訪れていた一家。突如空に現れた不穏な光を発する飛来物。建物や車が破壊される音。人々の悲鳴。化物の咆哮。

前作のアバンは作品の世界観を説明する観点から非常に秀逸でしたが、今作のアバンはアクションの側面からとてもよく出来ていたと感じます。

この第一日目を描いたことで、世界が荒廃する前のAbbott一家の交友関係が描かれているのはわかりやすい伏線。父親を失った彼女たちがかつての友人Emmett(Cillian Murphy)と行動を共にすることになるのですが、前作の目新しさから一転。作品としてはややありきたりなものになっています。


◆Abbott家以外の生活が明かされる。

人類の存続を脅かす脅威を前にしてパニックを起こす集団心理。荒廃した世界で自らが生き延びるために他の生存者から略奪することを考える暴徒。ディザスタームービーやゾンビ映画でとりあげられてきたエッセンスを今作でもやっているだけなので、前作の様なサプライズはありません。

それでも(かなり図々しさがありましたが)ヒロインであるEvelyn(Emily Blunt)の美しさと逞しさ。登場人物の少ない作品でありながら、キャラの立っているRegan(Millicent Simmonds)とMarcus(Noah Jupe)姉弟。C.Murphyも良い味を出しており、キャラクター達は相変わらずとても魅力的でした。

前作の成功で制作費を多くとれたのでしょうか。化物の見せ場も多く、アクションシーンは間違いなくハイクオリティになっていました。《痛み》の演出も冒頭から強烈な一発をかましてくれます。《トラバサミ》はエグい。

二箇所をリンクさせて同時並行で描くラストの演出も、手法としてはありがちでしたが《子供の成長》を絡めていたのでワクワクしながら(ラストの時間配分的にも)安心して観ていられました。

化物の新たな弱点が判明したことで物語に深みが出たように思いますが、襲われた人のご遺体が割と綺麗なまま残されていました。エイリアンが地球に飛来した理由(経緯)とか、何食って地球で生き延びてるんだとか、カァカァ鳴いてバサバサ飛んでくカラスに一切反応しなかったりとか、気になる点もちらほら出てきています。ここからどのような続編に繋げるのか、楽しみです。