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蜜蜂と遠雷のロトロのレビュー・感想・評価

蜜蜂と遠雷(2019年製作の映画)
3.0
原作既読です。

この原作は国際ピアノコンクールの始めから終わりまでを描いた長編です。
コンクールの2週間ぐらいの話で、ずっとピアノと向かい合っているので、あまりドンデン返しのような展開はありません。しかし、音楽という非常に文章にしづらいものを、見事な表現や文字の羅列で体現している小説です。

原作が文章で音楽を表現したのに対して、映画で求められるのは音楽を映像で表現しなければならない。
これは確実に求められる内容で、本当にレベルの高い演出が求められたように思います。
しかも、メインの出演者が4人いる群像劇。群像劇じたいが難しいのに、そこに音楽の表現、さらに本作のメインである才能とは?というメッセージ。そんなものを盛り込まなくてはいけない。
めちゃめちゃ難しい映画だったと思う。
しかも、コンクールなので何度もピアノを聞かないといけない。多分メインの演奏を最後一回にぶち込みたいけれど、それまでの演奏も薄くできない。みたいな難しい配分だったと思う。

音楽の映像演出に関しては、亜夜が引き始めるときは特にカメラが窓のそとからぐっとアップになったり、ワンカットでオーケストラをみせてのピアノみたいな、多彩な動きが新鮮で良かった。
雨の中に音楽があったり、森や馬がイメージされたり。このへんは原作ファンにも気遣ってくれる演出で◎
けれど、せっかくならもっと見たことのない表現とかが見たかったなという感想。

主役の亜夜は天才で、天然、天真爛漫だけれども、トラウマを持ってピアノとの関わり方に悩む女性。
相反する性格が混在するキャラ。
松岡茉優は非常に良かったけど、今ひとつ没入できなかった。
とはいえ、松岡茉優がダメなら誰がやってもダメ。
鈴鹿央士がめちゃくちゃ良かった。
新人賞総なめだそうだがうなずける。
見事に天才天然少年だった。

ピアノの映画って黒板に反射する顔とか、あらゆる演出がやられているので、難しいよなぁと思う。
しかも、クラシックが聞き馴染みがないため、あまり分からないし、クラシックがゆえに、むちゃくちゃに崩すこともできない。
自分的には「海の上のピアニスト」と「4分間のピアニスト」がピアノ映画のワンツー。
本作は要素が多すぎたのと、決勝までの盛り上がる過程がイマイチ分からなかったなって感じ。
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