この小説を知ったのは、趣味の習い事の先生からだった。「すごく面白くて一気に読んじゃったわ、おすすめよ!」そんな風に言われて、すぐにkindleに落として読んでみたら、何がどう面白いのかがわかって、私自身も夢中になってしまった。そして原作者のファンになり、次々と他の小説も読んでいく、というパターン。
恩田さんの小説はよく映画化されているという。でも恩師は「この小説は映画化は無理でしょうね。だって地味ですもん」と言っていた。私もそう思ったのだけれど、映画化されることを知って正直驚いた。この小説をどうやって映像化するのだろう、と。
今までの経験からすると、原作を読んでから映画を見ると、たいていガッカリする。原作の方が長いので、それを2時間から3時間の中に収めること自体が無理なのだ。映画を作る人が長い話のどこかを思い切って省略しなくてはならない。どこを割愛してどこを強調するのか、そこが腕の見せ所なのだけれど、これがなかなかうまくいかない。
結局、原作の好きなシーンが出てこなくて、どうでもいいシーンや原作にないシーンが出て来たりする。
予想どおり、この映画も「ガッカリ」の部類に入ることになった。原作のあの出だしが好きなのに、別のシーンから始まっていた。初めからガッカリというのはかなりキツイ。
ピアノコンクールの過程を淡々と描いている原作は、どちらかというとマニアックで地味である。地味だけれど、文章表現が独特で魅力的なので、ひきこまれてしまう。でも、映画はあまりひきこまれなかった。何かが足りない。何が足りないのか、うまく言葉にできない。何もかもがもどかしい感じだ。
逆に、原作を全く知らずに見たら、ずいぶん印象は違うのではないだろうか。純粋に映像を楽しめる気がする。
原作者はこの映画を絶賛しているという。本当だろうか。もし私が原作者だったら、絶対に気に食わないと思う。なんでこれでOKを出したのか、不思議でたまらない。
原作を読んでいる人は、映画は別モノと思って見に行くことをおすすめする。原作を読んでいない人の方が羨ましいかもしれない。
いろいろ文句ばかり書いたけれど、原作の雰囲気はちゃんとあるし、俳優さん達の演技もハイレベル、吹き替えで実際にピアノを弾いている手だけしか出てこない4人のピアニストのテクニックはウルトラ級。ピアノを弾くシーンはまさに眼福だった。