おとりさん

ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密のおとりさんのレビュー・感想・評価

3.5
ライアン・ジョンソン監督いわく「アガサ・クリスティの推理小説を思わせるようなミステリー映画が撮りたかった」と。
有言実行ですな。

クリスティばりの、大邸宅を舞台とした富豪の殺人事件。
容疑者は、親族ほぼ全員。
誰もがナイブズアウト(矛先が向けられる=疑わしい)状態の作品でしたよ。

探偵役はダニエル・クレイグ。
バディ役はアナ・デ・アルマス。
(奇しくも、007の最新作の主役・ヒロインコンビ!)
アナが演じる看護士は、富豪が唯一、心ゆるして何でも話せる相手として雇っていたんだけど、もう一つ重要な役回りがあるもんだから、物語が進むたびに見ている側も大丈夫?ってハラハラするんだよなぁ~。
この作り、面白い。

また、登場人物が多いと、物語の交通整理が大事になってくるけど、その見せ方もとってもスマート。
例えば、各人物の事情聴取の場面に合わせて、当日実際に起きたことを本人の記憶として見せてくれる。
すると、表にあらわれたもの=供述と、実際にあったこと=事実を対比できるので、彼や彼女が隠したがってることが分かるし、その人のキャラクターが立ってくるので、見る側も整理しやすくなる。
分かりやすくて好印象。

ただ、今ひとつのスコアにしたのは、ダニエル・クレイグ演じる探偵が、主役なのにあまり魅力的じゃなかったことと、真犯人が分かってもカタルシスがなかったので。

アガサ・クリスティをリスペクトした本作を見て、改めて気づいたけど、彼女の作品って登場人物の癖が強いんだなぁ。

ポアロもミス・マープルも魅力的で個性的。
ちょっと本作の探偵(ブノワ・ブランって、名前も覚えにくいよ)は役不足だったかもね。