ジェイコブ

ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密のジェイコブのレビュー・感想・評価

4.2
世界的なベストセラー作家のハーランが自宅で死亡しているのが見つかった。警察は自殺と見て捜査を進める中、匿名の依頼を受けてやってきた私立探偵のブノワは他殺の可能性を疑う。多額の遺産を巡り、ハーランの子供達はそれぞれの思惑を腹に据えながら、口を開く。そんな中、ハーランの専属看護師のマルタは何やら落ち着かない様子。ブノワはマルタこそが真実を見抜く鍵であると確信し、嘘がつけない体質という彼女に近づいていく。
今時珍しいほどの正統派ミステリー。アガサ・クリスティや横溝正史だけでなく、相棒や名探偵コナンなど、ミステリーを愛する全ての人にオススメしたい探偵物語。
トリックやアリバイ作りなど、多少強引な点も否めないが、嘘をつけない女性やナイフの館など、設定や人物の生かし方が非常に上手い。本作のテーマは「自分のルール(良心)に従い、生きる事」。哀れみと差別が表裏一体である、移民へのアメリカ上流社会の白人達の考え方が裏テーマとしてある。
ラストはこれが火サスだったら、最後に崖と船越英一郎が出てきそうなほどの追い込みで、ミステリー好きにはたまらない要素の詰まった珠玉の一本。