ナツミオ

僕たちは希望という名の列車に乗ったのナツミオのレビュー・感想・評価

4.0
WOWOW録画鑑賞
【ワールド・シネマ・セレクション】
東西冷戦下の東ドイツの高校生達の自由への渇望を描いた実話に基づく青春・人間ドラマの佳作。

原題 「Das schweigende Klassenzimmer」/英題「Silent Revolution」

2018年ドイツ作品
監督・脚本 ラース・クラウメ
原作 ディートリヒ・ガルスカ『沈黙する教室』
出演 レオナルド・シャイヒャー トム・グラメンツ ヨナス・ダスラー ロナルト・ツェアフェルト レナ・クレンケ

(WOWOW番組情報より)
東西冷戦下の東ドイツを舞台に、自由を愛する高校生たちのささやかな意思表示が思いも寄らぬ反響を呼び、不条理に事態へ発展していくさまを、史実に基づいて描いた衝撃作。

東西冷戦下の1956年、当時ソ連の衛星国の一つであったハンガリーで、共産主義体制に反発する民衆たちが蜂起するが、この動乱はソ連軍によって直ちに鎮圧されることに。
東ドイツの高校生テオ(シャイヒャー)と親友のクルト(グラメンツ)は、西ベルリンにある映画館でニュース映像を見てこの悲劇を知り、事件の犠牲者たちに哀悼の意を表すべく、授業中、有志の級友たちと共に2分間の黙祷を行う。しかし、これが思いも寄らぬ事態を招くこととなり・・・

第二次世界大戦後、ドイツは戦勝国に分割占領され、米英仏管理の西ドイツ、ロシア管理の東ドイツとなり、東ドイツ内にあるベルリンも米英仏管理の西ベルリンとロシア管理の東ベルリンに分割された。
時代は1956年の東ドイツ東部に位置する鉄鋼の町スターリンシュタットが舞台。
ベルリンの壁が出来るのは1961年8月で、まだ東ドイツから西ベルリンへの往来は自由に往き来できた高校生達が主人公。

高校生達が軽い気持ちでした”ある行動“が、大きな問題に発展していく。
東ドイツはソ連(現ロシア)の衛星国であり共産主義国家。

劇中では、父親がナチスだった為、進駐したソ連軍に処刑された過去を持つ息子や、戦後の反共産主義デモに参加した過去を持つ父親の息子、共産主義者として政治家になったエリート階級の息子など、
大戦終結後11年後。昭和31年。戦後の復興で街は復興したが、人々の心の中には大きな傷跡が残る、そんな時代。

同じ共産圏のハンガリーで自由わ求める市民達の動乱が起こり多くの市民が亡くなったニュースを知った2人の提案がクラス全員の未来に関わる事態に発展する。
事態を重く見た行政は、事件の首謀者探しの為、生徒一人一人にあらゆる圧力をかけて行く、またその家族達も秘められた過去が露わになる描写が苦しい。
共産主義国家の密告社会は、もう既に始まっていたのは、元々のソ連スターリンによる粛清時代から続く伝統か。

2人の主人公達、テオとクルトを演じたシャイヒャーとグラメンツの若々しい演技が良かった。
特にグラメンツは若きプラピ似のイケメン。人気が出そうな俳優さん。
テオの父ヘルマン・レムケ役ロナルト・ツェアフェルトも最後の場面での哀しみの表情はウルッとなった。

ある決断を強いられる彼等の行動は、自分達が高校生だった頃や今の子供達にはとても想像できないが、観る者にもその意思は伝わる良作。
ナツミオ

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