おださん

僕たちは希望という名の列車に乗ったのおださんのネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

字幕で視聴。
名作だよ…!! ほんっまに観られてよかった。ドイツのこと好きなので…色々と刺さったよ…。特に当時の東ドイツが…誤解を恐れずに言うと私は東ドイツという国が好きなんですよ…抱えている暗い背景と切なさ、哀愁にもうアァ〜ってなる…。だからこそこの映画は胸が苦しいしつらいし怖いし、実話だというのも本当に切なくなるし、高校生の彼らを称賛する気持ちになり、比べてなぜ(自分も含めて)もっと政治について興味・関心を持たず声を上げないのかと日本の現状を嘆きたくもなる。なんか泣きそうになるし、実際に泣いてしまう映画!!
主役はもちろん電車に乗った学生たちなわけやけど、その学生たちの絆や関係性だけでなく彼らの親の心情や背景を描いてくれたのが堪らなく良かったな…! 実際に戦争を体験している親世代、直接的に支持はしていなかったとしても、戦時中ドイツ側だった彼らは少なからずはナチに属していたわけで、その後ろ暗さや背景を全部否定して社会主義に染まりきらなくちゃいけないのが本当につらかった。社会主義国東ドイツは、自分たちの国はそうしてできているわけだし、抵抗するなんてことはない。でも子どもである学生たちは抵抗するんだよね…戦争を体験しているわけでもないし、社会主義になりきらなくちゃいけないとも思わないからね。だからたった2分間の黙祷が大ごとになってしまうことに気づけなかった、あんなにも人生を迫られる苦しみになるなんて思わなかった…。苦しい…。
正直私も目線としては学生に近いから、2分の黙祷でそこまで追求されるのは驚いたと同時におかしいと思ったし、大臣まで出てきて「首謀者を言わなければ卒業させない」と脅しのように責め立てられるのは理不尽だと感じた。でも先述した親世代の描写により親の、大人たちの「抵抗しないで進学出世エリートコースを歩んでほしい」という気持ちも痛いくらいにわかってしまったので、もうどちらの気持ちもわかるというもんのすごく切ない複雑な感情に悩まされる映画になってたよね!!
クラスのリーダー格なテオと親友のクルト。テオは炭鉱労働者の父を持ち母と弟2人のほのぼの家族、に対して、クルトはリーダーというよりはクールなブレーン的立ち位置で、父親も議員というエリートっぷりだがその分母の立場は弱い。厳格な父が母にあたる強い原因の一つには、亡くなった母の父(クルトの祖父)がゲシュタポ(ナチの秘密警察)だったという背景があるわけで…ほらもうこの時点で苦しいじゃん😭 2人は言わば対称的だし、テオの彼女レナはクルトにも惹かれててガッツリチューなんかしちゃうわけで、言うたら裏切り的行為もされてるわけなのにテオはクルトとの友情を捨てないんよね…。何でなのかな、ちょっと正直疑問やったし自分だったらできないなって思ってしまったけど、そこで“できる”のが彼らの意志の強さや友情の強さなんだなぁとも感じた。クルトが西側に逃亡した後の教室で首謀者をクルトとしてすべて罪を押し付けてもいいはずなのに、テオは「首謀者はいない、クラスのみんなで決めたことです」とクルトを庇う。そこには権力や理不尽に屈しないという強い意志ももちろんやけど、テオとクルトの絶対的な友情が描かれていて、親友の絆の強さ、その素敵さを感じられた。クルトが西側に逃亡する前に最後に会いに来た相手はテオなわけで、一緒に窓で喋るのも「親友だろ」と言葉が交わされるのも堪らなく良いシーンだった!
そんな子どもたちと比べてむしろ共感できたし胸にグッときて泣いてしまったのはお父さんたちのほうでさあぁ…!! 特にテオのお父さんがダメだった。息子に黙祷の首謀者を言うよう問い詰める父は、実は自身も昔反社会主義の運動に参加していて、それがきっかけ?で厳しい炭鉱労働に身を従じることになったという過去があった。息子には自分のようになってほしくない、優秀な進学クラスなのだからそのまま大学に行って出世してエリートとして歩んでいってほしい、子を思う父の気持ちがすべて詰まった一言「英雄になるな」…。いや泣くやろ!?? ダメです!!! テオはテオでちゃんと家族が大事だからさ、クルトに共に西側へ逃亡しないか誘われた時も断るわけですよ、「家族を置いていけない」って、だって大事だからね、でもやっぱり西に行ったほうがいいと思ってるわけでお母さんに言うわけ「父さんも、家族もみんなで西に行こう」と、でもお母さんはさ、「お父さんは無理よ、ここが故郷だから。故郷は捨てられない」って答えるわけ…😭 いや〜〜〜しんどい!!! 母の言葉とそこにこもる父の心情にボロッボロに泣いたよね!!!!! 東ドイツという国は、たった30年ほど前にはあった国は、誰かの故郷で誰かの国だったわけで、もちろん苦しみや悲しみがたくさんあってそこから解放され再統一した喜びも計り知れなかっただろうけど、生まれ育って生きた自分の国が無くなってしまったという側面もあったのかな、って…。個人的感傷も加わって号泣しました。お父さん、切ない…。でも結局別れることになって、年末になり西側の親戚のもとへ向かう別れのシーンで、今まではずっと一緒にバイクに乗ってたのに(電車に乗って西へ逃亡するから)「一緒に行けない」と返すテオに涙流しながら別れるお父さん…何も知らない弟たちが無邪気に「あとでね!」と手を振るのもまた…切なくて…。別れのシーンはやっぱりダメだったな〜泣くよね!!
クルトとお父さんのシーンももちろん泣いたしね!! 今まで好感度ずっと低かったクルトの父やけど、西に逃亡しようとしたクルトが警官に連行されちゃって、お父さんが呼ばれてしまった時に「祖父の墓参りに行くだけです」って庇ってくれて署名してくれるの、いや〜素敵やった…! ゲシュタポだった祖父のことも否定せず認めてくれた感じがしたし、何より自分の身分も危うくなるだろうに息子のためを思って議員でなく親として振舞ってくれたのが…! 泣ける…!! 最後の会話も「早く帰ってくるんだぞ」「わかった、なるべく早く帰るよ」ってえええん何それ〜…!😭(情緒) 西に行ってしまえばしばらくどころか一生会えなくなるかもしれない、それがお互いわかっているからこそ事実とは逆のことを言って、そうなるよう願いの気持ちも込めて別れるんだなぁ…。別れなければならないのが堪らなく切なく、悲しかった。
あと泣いたのはエリックね…!! 何気に一番悲しい男なんやて!!! 社会主義の隊員として戦死した英雄の父を誇りに思うエリックは最初から黙祷には少し乗り気じゃない感じで、でもクラスのみんなを守るために密告もせずにいたのに、郡学務局のケスラーから崩せそうと思われたのか執拗に追求受けるわけで…。このケスラーとか大臣とかの追求がガチガチに怖くて、1人ずつに話を聞き「エリックはテオが首謀者だと言っていたけど?」って誰も何も言ってないのにブラフを混ぜ込んでテオを追い詰めたり「君が首謀者なんだって?」って決まり事かのようにエリックを追い詰めたり、もうほんっまに嫌やった…。実際にありそうというか絶対にあったんだと確信できるし仲間同士も信じられなくなり疑心暗鬼に陥らせるその手法が本当に恐怖だった。あんなの大人でも耐えられないし自分がされたらと思うと恐怖でしかない…プスカシュの死が誤報だったことから西側のラジオを聴いてたのが明らかになりどこで聴いたのかテオが問い詰められるシーンが一番リアルでドキドキハラハラさせられてきつかった、スリル抜群だな!? そんな執拗な尋問の一番の被害に合ったのがエリックで、もうほんっまに可哀想やったよ!! 最初から仲間割れに利用されてるし、エドガー(クラスメイトのパウルの叔父で反社会主義的な感じ、あとオカマ?っぽい)の家でラジオを聴いていたことを話さざるを得なくなっちゃって、そのことでエドガー逮捕されてまうからパウルにすんごい責められるし、あと何より本当は父がナチに寝返った裏切り者でそのことがバレて処刑されたのだという真実で脅されるし…!! 首謀者言わなきゃ真実を新聞で公表するって、英雄として戦死したのだと信じていた父親をただ崇拝していた男の子にそんなひどいことする!? もう泣いちゃったよ…真実を知り銃振り回して半狂乱になりながら母に詰め寄るシーンとかもう…! 「お父さんは弱い人だった」ってお母さんに言われた時の絶望たるやもう…!!😭 実は父が処刑されて吊るされている写真にはクルトの父も写っていて、社会主義とナチが互いに疑い合い裏切り者を正義のように処刑していたというのがただただ悲しかった。戦争だから当たり前なのかもしれないけど、また改めて戦争の悲しさとつらさを確認した気がする。首謀者はクルトだと密告してしまったことをちゃんとクルト自身に伝えるエリック、本当に本当に良い子だし一番可哀想で悲しい人物だったよ…。エドガーとエリック、逮捕されてしまった彼らはどうなったんだろう…。幸せであってほしいな…。(原作小説読む)
邦題も個人的には嫌いではないよ…めちゃくちゃ素晴らしい題とも思わんけども(笑) いや〜〜〜原題『沈黙する教室』のほうがセンスありすぎるでしょ!!(笑) 英題の『沈黙の革命(静かな革命)』もそうやけど、やっぱり“沈黙”っていうのがこの映画の一つの重要な要素やった気がする。(遠藤周作ちゃうけども。←ごめんしゃらくさい) たった2分間、ハンガリーの民衆蜂起で犠牲となった市民を悼んでの黙祷、その教室の沈黙がもたらしてしまった大きな事件も示されているし、尋問にも負けず“沈黙”し続けた学生たちが、最後の教室のシーンでもクルトに罪をすべてなすりつけるのではなく「私が首謀者です」と一人一人立ち上がって声を上げていくことで首謀者に関して“沈黙”を貫いた場面を際立たせている。(話逸れるけどこのクラスメイトがほぼ全員立ち上がっていくシーンで絶対に立たない女の子がいて、一番前の列に座ってじっと俯いているんやけど、そうなんよな〜全員が立っちゃうとこれはフィクションやけど絶っっっ対、立たずにこのまま平穏に卒業したかった学生もいたんよな〜教室閉鎖みたいになってしまったけどそういった学生はどうなったんだろうな〜と感じさせられたのも素敵でした! 全員を立たせずに座って俯き続ける1人の女の子を描いてくれたことが素晴らしいと思った!) きっかけとなる序盤の黙祷シーンと西への列車に乗って逃亡することが決まる終盤のシーン、この映画の最初と最後のシーン両方の意味を含んでいるのが『沈黙する教室』という、改めて考えてもセンス溢れる原題でした!
ベルリンの壁建設前の1956年のお話というのがミソで、この後さらに厳しく東西の断絶が進んでいきベルリンの壁ができてしまっていれば学生たちは西へ行くことはできなかったのかと思うと、ほんの少しの出来事やタイミングにより大きく人生が変わっていくということや、身の回りで存在して起こっていることすべてが奇跡みたいなことなのだなぁということを再度実感した。パンフレットも当時の社会のこととか書いてくれてて勉強になったし良かったです! 何回も繰り返し見る人生の一本な映画!!
おださん

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