いののん

僕たちは希望という名の列車に乗ったのいののんのレビュー・感想・評価

3.7
1956年、東ドイツ。ベルリンの壁ができる前の話。


途中まで、観ながら私は困っていた。高校生たちの言動が浅慮に感じられる。思いつきでやったらいかん!多数決で決めたらあかん!やりたくない人の気持ちどうするの?思いついた、その言い訳、それでいけるかちゃんと検討したの?あんたら賢いんちゃうの?権力に抵抗する恐ろしさを、ったくわかっとらん!!!


スクリーンに向かって、勝手に反抗しながら笑、でも、心のどこかで、私は知っている。絶対に壊れないと思っていた厚い壁に、亀裂を生じさせるとしたら、その始まりは、それは、こういう高校生たちの力によるものなのだろう、ということを。


自分の感情に変化が訪れたのは、たぶん、エリックの揺らぎ、あのあたりからだ。


途中で気づく。あっ、この権力者(教育大臣)を演じている人は、「アイヒマンを追え!」で、アイヒマンを執念深く追った検事だ! あっ、この人(テオのお父さん)は、その検事の部下だった人だ!(テオのお父さん役の俳優さんは、東ドイツ出身のようです。) 時期もきっと同じ頃。戦後まもなく、まだ戦争の傷跡が生々しく、痛みが痛いままの頃。ナチスに関係した人も身近にいる。ナチスへの関わり方は、人それぞれ、あった。戦後、国家の体制もまだどうなるのか、先がみえない時代。そのなかで、どうやったら生き残れるのか、どうやったら子どもを守っていけるのか、先が見えないなかで、オトナだって必死だったはずだ。


高校生たちは、その場その場で、1番良かれと思うことを選択していったのだと思う。いつの間にか、こんなに成長して。


圧力をかけたオトナたちが、結果としては、高校生たちを成長させた。そのことに、何と言ったら良いのかわからない感情が、宙ぶらりんのまま、わからないまま、心のなかにあって、どうしよう、まだケリがついていない。何日経っても、私の思考は(思考なんて言えたもんじゃないけど)そこから先に進まないので、中途半端な気持ちのままで、感想を書きました。そんなこともあるさ、ね。
いののん

いののん