Inagaquilala

家族にサルーテ!イスキア島は大騒動のInagaquilalaのレビュー・感想・評価

4.2
一見、明るいイタリアン・コメディのように見えるタイトルだが、これが明らかに配給会社のミスリード。原題はイタリア語で「A casa tutti bene」というものらしく、「家ではみんな良い感じ」というような意味らしく、作品の内容と照らし合わせると、明らかに逆説的意味合いを含んだものだ。老夫婦の金婚式の祝いにナポリの沖合に浮かぶイスキア島(ルネ・クレマン監督の「太陽がいっぱい」のロケ地らしい)に集まった親族たちの物語。長男と長女は老夫婦が始めたレストランを継いでいるらしく、2人がこのセレブレーションの仕切りだ。そこに小説家をしている次男、老夫婦の夫の妹の家族、それに長男の離婚した前妻などが集合、それぞれに不倫や浮気、借金、介護などの問題を抱えている。

天候の悪化で、日帰りで帰るはずの親族一同は、なんとイスキア島で2泊する羽目に。そのために皆が抱えていた問題が一気に噴出。つかみ合いの喧嘩なども始まる。違いが隠していた秘密なども次々と暴露されていき、老夫婦の結婚50年を祝う会は、一転して修羅場と化していく。風光明媚な島とは裏腹に人々の見苦しい感情が次々と明らかになっていくさまは、コメディというよりも、もっと深く考えさせられるテーマも含んでいる。脚本も実によく練られているし、登場する親族たちを巧みに紹介していく話の展開はなかなかの巧者だ。タイトルは別にして、傑作だと思う。キャラクターだけでも19名、彼ら彼女たちにどんな結末が訪れるのか、興味津々だったが、予定調和で終わらないのが、ガブリエレ・ムッチーノ監督の本領発揮かもしれない。とにかく、家族に乾杯的なタイトルではないことだけは確かだ、と言っておきたい。
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