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象は静かに座っているのCookieMonsterのレビュー・感想・評価

象は静かに座っている(2018年製作の映画)
4.5
中国のとある地方都市、団地に住んでいる4人に起こる、とある一日の物語

男と老人、少年と少女
それぞれが阻害されている
それぞれが静かな怒りを抱えている
それは作品の冒頭から静かに、しかし明確に、画面に息づいている
男が窓の外へ叫ぶ声に、少年が部屋でひとり振る棒に、ひとり覚める老人の孤独な背中に、少女が交わす母親との会話にある苛立ちに、私たちは感じてしまう

冒頭から張られた頼りない細い糸のようなテンションが画面を支配する
そしてそれは暴発する
突発的に
それは暴発しないはずのものだった
予期しない結末としての、自殺、暴力、死、絶望
ある一日、4人に起こるそれぞれの出来事が人生を変えてしまう
それはふと落ちてしまった落とし穴のように不意に現れる

計算され尽くした演出に震える
基本1シーン1カット
連続性の中で表現される日常の冗長さと退屈、暴力という日常の破綻
バストアップを多用して、画面の外で何が起こっているかがわからない画角、プロセスを映さない覚悟
背中からのカットで示される世界への咆哮と方向性
ほぼ自然光で撮影することで発生する逆光で影に沈む表情
人と人の距離感を画面の深度でボヤけさせる表現
単調を超えた、目的を達成するための透徹した意志
痺れる

この作品の魅力を言葉で説明するのは難しい
作品自体が台詞などの言葉を極力廃し、画面の中に立ち込める緊張によって様々なものを表現し、それを観客が感じ取ることによって成立しているから
それを言葉にした瞬間、私たちは自分たちの感じたものとの乖離を感じざるをえず、どこか嘘みたいに思える
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