悪魔の毒々クチビル

ジュラシック・ワールド/新たなる支配者の悪魔の毒々クチビルのレビュー・感想・評価

3.3
共存の道はあるのか


前作が中々酷かったので、「次回作はもういいかな……」と当時は思っていましたが、旧キャストの再登場となれば話は別。
何よりも幼少期に観て映画と恐竜が好きになるきっかけとなったシリーズのラストとなれば、やっぱ劇場で観ておいた方が良いですよね、そりゃ。
という訳で早速観てきたんですがね。

…………あ、終わったか。
みたいな感じで、思っていたよりも遥かに残らなかったです。

サム・ニール、ローラ・ダーン、ジェフ・ゴールドブラムらレジェンドの集結は確かに良かったんですよ。え?ジュリアン・ムーア?…はて、何の事やら。
グラント博士とエリーの関係性も長い年月を経て一段落して、そこもファンとしては嬉しい所でした。

あと元恐竜好き少年としては、昔図鑑で見たテリジノサウルスやディメトロドン、ケツァルコアトルス辺りの登場はテンション上がりました。特にディメトロドンはかなり意外なチョイスで、今作で一番「おぉっ!!」と上がった所でした。
まぁテリジノサウルスは映画向けに大分脚色された感じはありましたが。

しかし2時間半くらい掛けておきながら、内容は中々地味でした。
相変わらずバイオシンや恐竜を闇市で取引する連中のセキュリティが雑で、シリーズ通して一番学ぶべき所が疎かなのは頭を抱えてしまいますし、オーウェン達が引き起こした騒ぎで闇市場から脱走したカルノタウルスやアロサウルスが普通に一般人を喰っていたのにノータッチでスルーされていたのは正直どうかと思います。

そして主役級のキャラを集めすぎたせいで、どんな恐竜に襲われても誰も死なないのが目に見えているので、パニック映画のハラハラ感が皆無だったのも難点でした。
折角出したギガノトサウルスも襲う相手が相手なので、そんなに怖く映らない。
舐めてかかったら毒液飛ばされて喰われたウェイン・ナイトやコンピーを煽った結果、コンピー集団に食い付くされたピーター・ストーメア、気が付いたら死んでいたサミュエル・L・ジャクソン等々、過去作で恐竜の恐ろしさを示していた喰われキャラがほぼ不在だったので恐竜側も顔見せ要員にしかなっていないのは残念でした。
ラプトルの頭脳プレイやヌッとシルエットが不気味に映るプテラノドンと言った、恐竜の個性を活かした演出もそんなに無かったし。


今作では島を越えて人間の生活圏にまで恐竜がやって来てしまった訳なので、もっと恐竜の恐ろしさが伝わる作風にして欲しかったですね。
何なら本編が始まる前に表れた"字幕翻訳:戸田奈津子"の文字を見たときの方が普通に怖かったです。
一応前作の「落ち着け、ここは死の島だ」みたいなぶっ飛び誤訳は無かったとは思いますが。

因みに今作はまぁまぁキモい虫映画の一面もありまして、まさか最終作でモササウルスよりもイナゴの出番の方が多くなるとは思わなんだ。

主要キャラで言えば前作の戦犯メイジーは反抗期なのも相まって、相変わらず好きにはなれなかったです。
あとバイオシンのあの代表の人はスピンオフシリーズの「サバイバル・キャンプ」にも出ていましたね。今作であの缶を手に入れた経緯もそっちで描かれていたので出てきた時ははっとなりましたが、あの缶の呪いと言わんばかりの末路はちょいと笑えたかな。
そもそも「サバイバル・キャンプ」の最終シーズンを先日観終えたばかりだったので、あの黒人青年は最初てっきりダリウスかと思っちゃったよね。
あっちの方も全シーズン観て思ったけど、このシリーズはセキュリティをしょぼくしないと物語の突破口が開けない部分が弱点な気がする。

ラストの恐竜バトルもvsインドミナスレックス戦ほど見入るようなものでも無ければ、オーウェンとブルーの別れに至ってはワールドシリーズ毎の恒例行事と化しているので何を今更……と、感動も出来なかったです。
まぁ最後にハイブリッド恐竜を出さなかった所は評価します。
スコア自体はもう少し上でも良かった気もしますが、大好きなシリーズの完結編を観たあととは思えないくらい余韻が無いものでして。
一応前作よりは好きですし、駄作とまでは思っていないんだけどうーん、何でかな。普通に「サバイバル・キャンプ」の方が楽しめました。