backpacker

ジュラシック・ワールド/新たなる支配者のbackpackerのレビュー・感想・評価

3.0
◾︎『ジュラシック・パーク』シリーズ第6作

【作品情報】
公開日   :2022年7月29日(日本)
作品時間  :146分
監督    :コリン・トレヴォロウ
製作    :フランク・マーシャル、パトリック・クロウリー
製作総指揮 :スティーヴン・スピルバーグ、コリン・トレヴォロウ
脚本    :コリン・トレヴォロウ、エミリー・カーマイケル
原案    :コリン・トレヴォロウ、デレク・コノリー
原作    :マイケル・クライトン
音楽    :マイケル・ジアッチーノ
撮影    :ジョン・シュワルツマン
編集    :マーク・サンガー
出演    :クリス・プラット、ブライス・ダラス・ハワード、ローラ・ダーン、ジェフ・ゴールドブラム、サム・ニール、ディワンダ・ワイズ、ママドゥ・アティエ、B・D・ウォン、オマール・シー、キャンベル・スコット、他

【作品概要】
全世界に恐竜が解き放たれて4年。恐竜達の遺伝子を利用するバイオテック企業の陰謀に、過去5作の登場人物たちが立ち向かう。

監督には『ジュラシック・ワールド』のコリン・トレヴォロウが復帰。『スター・ウォーズ EP9 Duel of the Fates』の脚本準備作業等を進めていた中で、スタジオ首脳陣に解雇されてしまったことが、デレク・コノリー共々シリーズ復帰できてしまう遠因となるとは、皮肉なことである。
なお、個人的には『Duel of the Fates』のリーク情報は震えが走るほどこの身であったが、『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』の同窓会映画ぶりには辟易してしまった。同じような境遇の作品でこの違いが生じたのは、偏に『ジュラシック・パーク』シリーズの主役が恐竜であり、人間は脇役に過ぎないからではないかと思料。


【作品感想】
見る前「『DOMINION(新たなる支配者)』なんて名前だし、激変する世界を語る壮大な物語になるんだろうなぁ」ワクワク
見た後「…………老人会のホームビデオは、もう沢山なんだよなぁ」

恐竜映画だと思ったら、人間とイナゴの物語だった衝撃。
本作のイナゴは、遺伝子改良されバカでかくなっています。想像するに、この映画は実は『新たなる支配者』誕生の前日譚なのではないでしょうか?
ウー博士が最後の最後に天に放ったイナゴは、ウィルスを用いた自死のプログラミングがなされており、他の化け物イナゴを抹殺する役割が与えられていました。
しかし、考えてもみてください。過去5作の教訓であり、マルコム博士が最初から口を酸っぱくして唱え続けたことを。貧相な想像力と強すぎる自負・自信が為に、予測することをやめ、「こんなはずじゃなかった」ということばかり起きることを。
ということは、イナゴたちはきっと生き残るってことですね。それも、想像だにしなかった進化を遂げて。

おそらくですが、この後の物語としては、イナゴ害により文明が崩壊した人間に代わり、恐竜達が全世界を領土として、我が物顔で闊歩する。まさしく『新たなる支配者』として……ということではないでしょうか。
とすると、本作のイナゴたちは、『ヨハネの黙示録』で第5のラッパが吹き鳴らされた後に起きる、災いを象徴しているということですかね。
『ヨハネの黙示録』のイナゴは、サソリのような棘を持ち、神の印を持たぬ人間を襲います。
遺伝子改良イナゴも、同様な進化を辿ったとすれば、恐竜は襲われませんしね。


などという妄想に逃げ込んでしまう程度に、肩透かし感の強い作品でした。
気になった個所を備忘がてら箇条書きにしておきます。
・登場人物が多すぎる
・人間ドラマが長すぎる
・恐竜メインパートが少なすぎる
・世界の激変が感じられるような描写が少なすぎる(市井の人々の暮らし描写の圧倒的少なさが原因か)
・悪役であるテック企業のCEOのビジュアル、手抜きすぎ
・物語で起きていることが、実はどうでもよすぎることばかり
・描くべき最大のテーマは「世界に解き放たれた恐竜と、人間はどう向き合って生きていくか」であり、「もう一度狭い世界に閉じ込めよう」という展開は、過去5作から全く脱却できておらず、進歩・発展も感じられない
・過去作メンバー揃い踏みを見せたいがために、画面を覆いつくすほど人が並べるのは、単純に見にくい
・「みんな~、同窓会の思い出に、集合写真撮るよ~」な画のしつこさ
・スピルバーグオマージュ&リスペクト、やりすぎでは?


なんだか、こんなこじんまりした作品が出てくるとは思っていませんでしたので、正直失敗した完結編という印象が強く残ります。以前にも、こんなことになった巨編シリーズ同窓会映画があったような気がするんですが、ハリウッドは何を学んでいたんでしょうか……。
backpacker

backpacker